天平の甍 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1964年3月20日発売)
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本棚登録 : 1747
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先週、奈良を旅して寺を回った。現在の自分にも無縁ではない、日本の木造建築や大工技術の歴史に改めて触れたいという思いからだが、千年もの歴史に対して想像力が及んでいるかといえば、心許ない気持ちになっていた。そんなとき唐招提寺のおみやげ屋さんで見つけ、ふと手に取った本。


奈良時代、仏教における「戒律」の師を連れ帰る使命を帯びて遣唐使船で唐へと渡り、のちに鑑真和上を日本へと招聘した僧たちを主人公とした歴史小説。

己の命と、人生の大半を賭した任務に就いた者たちの生き様が、残された記録に基づいて淡々と描きだされる。歴史小説という分野をあまり読んだことがないが、千三百年も前の出来事を残された記録に基づきながら想像によって補いつつ進む文章に、過剰な脚色は控えられているのかもしれない。それでも後半へと読み進めるに従って胸が熱くなった。ディテールの抑制された行間から、無言の裡に確かな人々の魂が感じられるようだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月29日
読了日 : 2017年8月27日
本棚登録日 : 2017年8月27日

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