錆びた夜でも恋は囁く (ディアプラス・コミックス)

  • 新書館 (2015年3月30日発売)
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感想 : 45
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作者の作品は読むの2作目、『恋とはバカであることだ』から一変してセンシティブで心が痛い系。弓は幼馴染のかんちゃんと付き合い、ほぼ同居状態。かんちゃんは自分の苛立ちを日常的に弓にぶつけて彼の感情など構わずに肉体を使い、束縛する。そこに中学で一緒だった他者とのコミュニケーションが苦手な真山と自分のバイト先の居酒屋で再会する。弓は自分が好きな相手であるかんちゃんが悪意を持って自分に暴力をふるっていると認めたくない。弓の些細な様子にも気づく真山に助けてくれと言えない。深入りさせたくないと言う気持ちと、助けて欲しいと言う気持ち。自分に関わらせてしまうと、真山にも人間の暗い面に触れさせてしまうから、それを避けたいのもあるが、殴られ犯されるだけの自分の存在感を知られたくないのかもしれない。人間関係が閉塞していく時の、収縮して暗く重い密度に凝り固まり、二度と抜け出せないブラックホールに入っていくような感じが描かれていた。
自分をみじめであると気付かせる相手(ここでは弓にとっての真山)から逃げる事は簡単だ。真実に目を瞑り、自分は大丈夫なんだ、と言い続け暗示にかける事も簡単だ。そう言う相手に「同じ経験をしてないんだから自分の気持ちが解る筈がない」と突っぱねるのも簡単だが、何故気付くのだろう、と言うところを考えなくちゃいかんだろうなぁ。DVを受けながらそこから逃げない人間の性分が描いてある作品でもある。
弓を殴りつけていたかんちゃんの心の弱さにも目う瞑っていた弓。真山が現れなければ二人で共倒れしていただろう。共依存は第三者の手を借りて抜け出る道を作って貰ったら最後の機会を気付ければ救われるんだろう。
かんちゃんはその後、幸せになったんだろうか…二人は思いっ切りバカップルになっとりますが(笑)
絵柄に少々宮本佳野さんの香りが…しますね。DV関係に陥っている人間関係がこういう風に解消する確率なんぞ実際問題で言うと低いのかもしれんが、嗜好としてサディストの要素がない人間なら、絶対に罪悪感を覚える筈なんだよ…そこが描いてあった。
劣悪な状況から救ってくれるのが「愛の力」と言う、ロマンス小説家おとぎ話かよ!!と言うケリの着け方じゃないと言うのが物凄く新鮮だったわー。人間観察に優れてないとこう言う作品は描けないと思う。井戸ぎほうさんの『夜はともだち』もそうだったけど、やっぱリアルBLと言うジャンルは他のBLジャンルとは別物で語るべきだ。「リアルBL」は「現実にありそうじゃない?」のありそうな部分を幾らでも課題妄想していい、って事じゃないから。対人間関係に於いて「リアルである」って事だから。
ほそやん、BL出ないんだよね…いやー、この真山役、ほそやんやって欲しい!!でもって弓はたっつん!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL
感想投稿日 : 2015年4月17日
読了日 : 2015年4月17日
本棚登録日 : 2015年4月10日

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