囀る鳥は羽ばたかない 1 (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

  • 大洋図書 (2013年1月30日発売)
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本棚登録 : 2828
感想 : 141
5

昨年、この作品を初めて読んだ時は、矢代を抱いてやる為に何にが何でも不能を克服しろよ、百目鬼…なんて思ったんだが、コミックスになって一気に読みなおすと、矢代はそれを望んでないかもしれないな、と言う気がした。百目鬼が不能であったからこそ、自分に明ら様に好意を向けてくる百目鬼を放り出しもせずに自分の傍に置き続けられるのかもしれない。過去に自分に性的な意味合いも含めて、好意を剥き出しにしてきた人間達とは違う種類である、と言う絶対的なものがあればこそかもしれない。矢代は決して弱くはないので、力任せに迫って来るようなゴリ押しの行為を上手い具合に排除できるだろうし、組織の中でもそれなりの地位にいて力でねじ伏せられるだろうから、性的な満足を得る為に無理強いされる必要性はなくなっているんじゃないだろうか。心底淫乱であったなら、部下には手を出さないとかそんな制約を自分に設けたりしないだろう。矢代は、自分の欲望をコントロールできる程に冷静なんだろうなぁ…。対する百目鬼は性的なものをきっかけに不能になったにも関わらず、一見性的には無節操に奔放に男を食っている矢代に対して、嫌悪感を全く抱かずにいる点で、この作品は下事情を下世話に想像して萌えてどうこうと言う作品ではないと思う。
百目鬼が無条件で一目見ただけで矢代に惹かれて止まなかったのは、矢代の本質を一瞬でスキャンするように読み取ってしまったからではなかろうか、と。
矢代は肉体的には変態だけど、精神面は至極真っ当なんだよ、これだけ肉体的には淫らに汚れてるのに、純粋に同性を愛せる自分と言うのを自覚して、影山に恋した時に絶望したんだと思った。肉欲が欲するから影山を愛したのではないんだよ…
影山がさぁ…矢代の恋心に気付いてないよな、今も。いや、薄々は気付いてるけど、矢代の中では終わったものではなくてずっと引きずってるものだよな、影山への初恋は。大人になった時点で、学生~大人の間で一区切り着いた様に振舞ってるけど、やっぱこのお話は矢代と影山の話なんだな、って気がする。矢代が百目鬼を可愛いと思うのが恋愛感情ではない、と言う部分を恋愛に変えるには、百目鬼がどんなに「頭、好きです」って尽くしても覆せないかもしれない。性的なものに晒されて中毒みたいになってしまった矢代と、性的を目の前に晒されて不能になってしまった百目鬼と…矢代、百目鬼をカタギの世界に戻したいんだなぁ…ずっとそれが引っかかってるだろうな、矢代の心の中で。
影山って火傷フェチの種類の中でも煙草の痕が一番興奮するんだろうなぁ、煙草で肌焼かれると言う状況を考えると、それは普通じゃないと言う事も想像できていると考えると、影山はかなり歪んでるなぁ。中途半端に常識人なんだよなぁ。矢代の気持ちに気付かない訳だよ…歪みを解放できずに内側で腐らせて、干からびてたとこにぎらぎらする久我が現れた、と…
一番知られたくなかった影山に一人である事を知られてしまった矢代の孤独はいかほどだったろうか…泣ける…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL
感想投稿日 : 2013年6月5日
読了日 : 2013年6月5日
本棚登録日 : 2012年12月12日

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