身体から革命を起こす (新潮文庫)

  • 新潮社 (2007年8月28日発売)
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著者の甲野善紀氏は、武術家、武術を基にした身体技法の実践研究家である。本書は2005年に発刊、2007年に文庫化された。
甲野氏は、「ナンバ」(右手と右脚、左手と左脚を同時に出す、江戸時代の飛脚の走り方)など、日本人古来の身体の使い方に注目し、独自の身体操法を研究してきたが、そこから導き出されたのは、「体幹部をねじらず、足で床を蹴らない、つまり反動を利用することがない」動きであり、本書においても様々な実例が紹介されている。
そして、甲野氏は、「私が研究してきたのは、剣術にも体術にも共通するような動きの原理、身体の使い方の原理ですから、スポーツにも応用できます。ただ、それは今日のスポーツの常識とはまったくちがった動きです。だからこそ現代のスポーツの常識では無理だと思い込まれてきたようなことを可能にするのです」といい、甲野氏から直接教えを受けた桑田真澄や、直接の接触はないというものの、「ナンバ」が一般に注目されるきっかけを作った末續慎吾ほか、多数のアスリートへ影響を与えたことが語られている。
また、甲野氏の理論は今や、武術やスポーツのみならず、楽器の演奏、舞踊、介護医療に応用されており、フルート奏者の白川真理の例も記されている。
様々な分野を支配する西洋的観念・発想を見直す一つのアプローチとして注目に値するものと思う。
(2007年9月了)

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感想投稿日 : 2016年1月13日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年1月13日

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