レビュー by Cyberさん
『隣の芝生は青い』の諺にも代表されるように、人が何かを求める理由の多くが、「他の人が持っているから」「持っていない自分に見劣りを感じるから」。本当にそれを必要としているのかを分析することなく、ただ『持つこと』だけが目的化し、それが『欲』として増大する。そして、「他の誰もが持っていない」ことで、自分の優位性に浸ろうとする。しかもそれは、単に個々人の間柄だけではない。家族間、近所間のコミュニティ、会社組織、果ては世界各国に至るまで、『それ』に対して『必要』としているのではなく、『持っていること』に『必要』とし、一人歩きしている。
一方、自分が既に持っているものを、他人にも強要することも、個々人の間柄の軋轢を生む原因にもなっている。「これを持っているべき、あるいは使えるべき」「こんなことが出来なければ困る」。ある分野では劣っていても、別の分野では力を発揮する事もある。もしくは、ある分野でも別のアプローチをすれば、力を発揮することもある。それを見出せずに、一方的に決め付けて、結果として貴重な能力を十分に発揮させる事も無いまま終わらせてしまうこともある。
題名は『求めない』だが、作者でさえ、この先ずっと「何も求めない」なんてことはあり得ない。お腹が空けばご飯を食べるし、寒いと思えば服を着込むし、眠いと思えば床に就く。要は、今自分が欲しているものが、自分の手持ちの対価を支払ってまで、自分の為に必要なものであるかどうかを見極めろ、ということなのだ。
何もかもが揃う現代社会、人はいとも容易く対価を支払って『それ』を得る。得たものが自分にとってどれだけの価値があるのかを知ろうともせずに、また失う、手放す対価がどれだけ価値があったものかを理解しようともせずに。
「必要なものを過不足無く」というのは、簡単に見えて実は凄く難しい。だからこそ人は悩む。でもその先に切り拓くものも忘れてはならない。
登録日 : 2007年11月23日 16:54:33


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