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Cyberさんの本棚 > マイティ・ハート―新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死


レビュー by Cyberさん

book   5

自分の大切な人が誘拐され、手足を縛られ、銃を突きつけられ、今にも殺されそうなところを目の当たりにして、正常でいられる人などいない。普通の考えはもはやできず、取り乱し、自分を見失ってしまう。
でも、著者マリアンヌ氏はそうではなかった。恐怖に自分を見失う事が、そもそものテロリストの狙いなのだと。テロリストは、『恐怖』こそ自分達の思想を全世界に知らしめ、植え付け、自分達の思い通りに世界を動かす、ということを知っている。彼女もそれを知っている。だから屈しなかった。絶対に。ただでさえ妊娠中の不安定な時期であろうとも。
そして、囚われの身であるダニエル氏も、自分が囚われているところを撮影され、全世界に配信されても、その表情に怯えは微塵も無かった。少しでもその表情を出せば、きっとそれを見ている者に恐怖心を植えつけてしまうから。「この身を奪う事は出来ても、魂まで奪う事は出来ない」そんな確固たる信念を忍ばせている。

結果として、ダニエル氏は惨殺されてしまったが、それでも彼女は屈することなく、今でもテロリスト達と戦っている。やがてその輪は大きくなり、世界中をつなげる。不覚にも、その輪に込められた、彼女とその周囲の人たちの言葉と想いを綴った最終章に、涙してしまった。


僕はジャーナリストではないが、『正しく伝える』というのは、実のところを言うと凄く難しいと思う。一つの事象に対して無数の視点があるわけだし、書き手の主観も混じってしまうかもしれない。結局のところ、『真実』は『読み手』に委ねられてしまうのだが、捏造の多い記事も蔓延しているのだから油断ならない。
それでも、パール夫妻は、『事実』はもとより、限りなく『真実』に近いジャーナリストとして、世界を駆け巡ってきた。100%ではないにしろ、限りなく100%に近い『真実』を知ってもらう為に。『強い心』を持つ人間とは、正に彼等を指すに違いない。 登録日 : 2007年11月04日 17:17:11

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