レビュー by Cyberさん
人身売買、幼児虐待、児童買春、臓器売買……
今尚、闇の世界で繰り広げられている、身勝手な大人に夜欲望の渦。その渦中の被害者は、後にも先にも弱者、中でも世の中の穢れを知らない無垢な子供たちだ。
まるで物を売るかのように我が子を売る親達。商売道具として奴隷のように調教し、虐待を以って自分達の身の程を教え込むブローカー。そんな事実を知りながら、多額の賄賂で見ず知らずを押し通す警察や軍。そして、エイズ等に感染すると、まるで虫けらのように捨てられる。もはや金にはならないと判断されたら、いとも簡単にその生命は切り捨てられるのだ。
「人の生命は皆平等」。それすらも戯言のように聞こえてしまうくらい、この作品は残酷なまでに今の闇に潜む魑魅魍魎を描いている。たとえ文字だけの世界でも、読み進めるだけで眉をひそめ、目を逸らしてしまう。
この作品を読んで最も感じたことは、世界を根底から変えるのは、並大抵の覚悟では務まらないということ。弱者を喰い物にする大人の欲望は果てしない。一つその芽を潰してもまた別の芽がどこからか生え出す。いたちごっこのように切の無い世界は、根底を断ち切るしかない。
しかし、生半可な覚悟では解決できるとは思えない。また必ずしも自らも手を汚さずに解決できるわけではない。それに、これらは別個の問題ではなく、全て繋がっている。これは、闇の世界に限らず、表にも出ているあらゆる問題にも関係していると思う。
著者の出自故か、この作品の最後と解説部分は、納得いかない描写がある。まるで、豊かさを享受した者が犠牲になることでこの問題が解決されると言わんばかりだ。また、それまで決死の覚悟だった者を一転して無関係にさせるように誘導するようにも取れる部分もある。フィクションとはいえ、それまでの描写で突きつけられた残酷さがあまりにも強烈だったのに、最後の方で政治的民族的な表現を出すのは残念だった。
登録日 : 2008年05月31日 12:55:06


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