レビュー by daidai105さん
引用
-
夢想に育まれたものが、一旦現実の修正を経て、却って夢想を刺激するようになったとみえる。
― 33ページ -
終戦の詔勅をきいてから、東京なら宮城前へゆくところであろうが、誰もいない京都御所前へ泣きにいったものが大勢いる。京都には、こういう時に泣きに行くための神社仏閣が沢山ある。
― 68ページ -
「私を見抜いてください。」ととうとうと私は言った。「私は、お考えのような人間ではありません。私の本心を見抜いてください」和尚は盃を含んで私をじっと見た。雨に濡れた鹿苑寺の大きな瓦屋根のような沈黙の重みが私の上にあった。私は戦慄した。急に和尚が、世にも青朗な笑い声を立てたのである。「見抜く必要はない。みんなお前の面上にあらわれておるぞ」和尚はそう言った。私は完全に、残る隈なく理解されたと感じた。
― 262ページ






コメント
まだコメントはありません。