愛なんて嘘

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103056546

作品紹介・あらすじ

誰といても孤独なのは、結局、この世界が人々の裏切りで満ち満ちているから。結婚や恋愛に意味なんて、ない。けれどもまだ誰かといることを切望してしまう。正解のない人生ならば、私は私のやり方で、幸せをつかみとる。かつての恋人を探し続ける女。死んだ親友の妻に同居を強要された男。離婚し、それぞれ再婚しても二人で添い遂げる約束をし続ける夫婦。自己愛という究極の純愛を貫く六つの短編集。

感想・レビュー・書評

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  • ここに登場するすべての主人公が、「恋愛」などという生易しいものを超越し、生への執着すら希薄なまま日常を生きている
    だから「愛なんて嘘」であるはずなのに。
    たった一人の「その人」を皆、探し追い求めている。
    「愛」という言葉はあまりにも簡単すぎるのだろう。
    男女の関係において、あらゆることを超越しその人のすべてを許容できる存在として「その人」が居るのだと言われているようで。
    だから、ここに登場して来た美緒子も麻里江も果穂も小枝子も志摩も佳世子もとても幸福の者達なのだろう。
    愛(してる)なんて(言っているうちは)嘘であるのだ


  • 恋人がいても、旦那や妻がいる人びとが主人公の短編で
    愛は無視できないということを改めて感じます。


    この短編を面白く感じるポイントは
    主人公やその交際相手は定職に、一般企業で働き、そこそこの収入もありそうな人々であるということ。

    そんな割と恵まれた環境にいながらも、愛が芽生えれば現場にお構いなしで心にしたがう。

    「愛の力」なんて、使うのも恥ずかしいような言葉ですが、それを感じます。



    彼ら彼女らが真っ当で、かつ現代社会では中流階級の人々だからこそ、
    この恋愛物語は読み手に共感以上夢物語未満の「憧れ」の想いを芽生えさせるのでしょう。



    これは世の中の年齢や婚約者の有無で恋愛を忘れかけていたひとびとロマンを想起させなおす、ある意味アブノーマルな本かもしれませんね。

  • 短編集ですが、どれも登場人物がどこかへ行ってしまうお話です
    人が抱えている狂気がとても怖いストーリーばかりでした
    もう読みたくありません

  • 小説というのは、一種の思考実験なのではないか、と思うのです。
    リアリズムの枠の中で、設定という条件を与えたときに、
    登場人物がどういう行動をとってどういう結果に至り、どういう結論を導き出すのか? という。

    現実の中で起こることには、常識とか倫理とか法とか、
    私たち自身の人生の不可逆性とか不再現性とか、
    そういう様々な拘束があるから、私たちは小説を読むのです。

    「愛なんて嘘」というこの言葉は、
    愛について、運命について、そういう抗い難い力について考え続け、幾つもの実験を繰り返してきた白石さんが辿り着いた、一つの仮説なのではないだろうか。
    そして、その仮説を検証するための実験記録が、ここにある6編の物語なのである。

    この仮説がはたして支持されるのか、それとも棄却されるのかについては、
    けれど慎重な考察が必要だ。

  • 愛のカタチは人それぞれ 計り知れないもの

  • 最初の「夜を想う人」を読んで、うわあ、と思った。うわあ、私この小説めちゃくちゃ好きだ…。
    好き嫌いがわかれると思う、というか、この主人公たちの気持ちはわかるひととまったくわからない人にばっっっさり分かれると思う。私はわかる気がした。
    こんなの書ける人がいるんだ、しかも男性なのに。と思ったけど、こんな想いを抱くのに実は男性も女性も関係がないんだって、究極の「自己愛」の小説だいうコピーを読んで思った。帯に書いてる「狂気まみれの純愛」って、自分に対するもののことだったのか。
    そう思って読むと、これは恋愛小説ではなく、自分の生き方探しの話。(恋愛をとおして自分探しをする、というのともなんか違う)
    こんな視点から恋愛を書くなんてすごいなあ。

  • まず。
    読み終わって知った。
    作家さんは男の人か!
    なぜか、女の人かと思って読んでいた。

    伊坂幸太郎とか、男の人の小説って苦手なものが多いのだけれど。。白石さんの文章は読みやすかった。

    - - - - -

    小説っていいな、と思った。
    どの話も自由。自由すぎて。

    残りの人生、こんなことがあっても
    悪くないのかも?いや、どうかなぁぁ・・?さすがに勇気ないかも・・( ゚д゚)
    と悩みながら(笑)読んだ。

    こんな人生をおくっているひとが、世界のどこかにいるのだろうか。

    人生いろいろ、だ。

  • 気持ちがすさんでるときに読むと楽しいと思う。
    逆に守りたいもの(家族、恋人など)があるときに読むと、途端に不安になる。

    でも、私もわかってるんだ。
    愛なんて 嘘。
    愛なんて存在しない。私の中では。

  • 短編集。帯に惹かれて。
    私には私しか、いないー。
    恋なんて白昼夢。結婚なんてまやかし。
    けれどもまだ誰かといることを切望してしまう。

    正解のない人生ならば、私は私のやり方で、幸せをつかみとる。

    夜を想う人
    恋人の元妻が帰ってきた。15年も前に離婚している相手だ。
    男女の別れ。一緒にいるだけで幸せってことではないって最近わかってきた気がするけどでもまだ一人でっていうのがうまく納得できない気がする。もう少し大人になってみればわかるのかなぁ…。

    二人のプール
    一度別れた男と今でも繋がっている女。お互いに別の家庭を持っており子どももいるが元に戻ろうとする。別れた理由も納得できないし、戻ろうとすることもよくわからない。

    河底の人
    急に姿を消した恋人に再会する。なぜ姿を消したのか問うと自分に会ったからだという。

    わたしのリッチ
    猫と昔の男と今の男。

    傷痕
    不倫をされている男と部下の話。
    一年後新しい人生を歩まないか、という誘いをされた。

    星と泥棒
    亡くなった親友の奥さんと娘が泥棒に入られたことにより家に住むことになる。


    人間なんてみんなクズだよ。

  • 名作

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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