- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106491
作品紹介・あらすじ
多発するテロ、押し寄せる難民――終わりなき非常事態! 西欧育ちの若者が、なぜイスラム過激派に共鳴するのか。欧州の「自由」と「寛容」は、いかに失われつつあるのか。欧州を覆う苦悩から、世界の明日を読み解く!
感想・レビュー・書評
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異なる宗教は共存できるのか(イスラム教と、キリスト教)
イスラム抜きに、今の欧州は理解できない
20世紀は、ユダヤ教と、キリスト教、21世紀に入っては、イスラム教の影響も、3大一神教が
中東を発信源として、欧州を揺さぶっている
キーワードは、テロ、移民、文化の衝突、融合しない宗教、移民受け入れに伴う社会福祉費用の増大だ。
気になったのは、以下です。
・建国を宣言したイスラム国は人工増強策に女性を必要とした。男性戦闘員と結婚させ、次世代テロリストを産ませるためだ
・結婚できる歳を9歳としたのは、ムハマンドの妻アイシャが、6歳の時に嫁ぎ、9歳で性交したとの聖典の記述に由っている
・中東にわたり、テロ組織の戦闘員になる西欧人には、いくつかの特徴がある。定職がない。麻薬やかっぱらいなどの軽犯罪に手をそめた不良だったなど
・盗聴や通信傍受で多量データを収集しても、そこから必要な情報を引き出す能力がないと意味がない。本当に必要な情報をよりすぐり、テロリストを結ぶ線をどう見つけるか、分析力が必要だ
・聖戦や抵抗運動を志すイスラム教徒は自国やあらゆる場所で、米国に対する戦いに参加することができる。
・欧米人なら、雑踏にまぎれやすい。テロ犯罪歴がない小者なら、捜査当局にマークされることもない。目立たないように、細胞はできるだけ少人数がよい。
・テロリストの出現は英国政府を震撼させた。270万人のイスラム教徒がいる、多くは、移民2世、3世だ。
・イスラム教徒たちが西欧にやってきたとき、彼らは希望に満ちていた。西欧は第2次大戦後の経済復興期にあたり、産業を支える労働力として、南西アジアや北アフリカからくるイスラム教徒たちは歓迎された
・西欧で生まれた移民の子たちは、出生国で市民権を獲得した。現在は、2世、3世だ。
・イスラム教徒はいまだに、フランスでよそ者扱いです。我々は人種差別撤廃に努めている、という人たちも、イスラム教徒が信仰を実践することを嫌うのです
・西欧ではイスラムとの関係で2つの異なったアプローチがある
①同化主義:フランスやドイツのように、同化、をもとめ、移民たちに自国の価値を植え付けようとする考え
②多文化主義:英国のように、さまざまな民族集団が独自の宗教、習慣を維持しながら、併存を目指す考え
・シャルリ:漫画をつかったイスラムへの風刺
仏誌 リベラシオン、ルモンドは、ムハマンドの風刺画をそろって新聞に掲載した
米国は掲載に慎重、ニューヨークタイムス、AP通信、CNNらも報道を見送った
日本も、読売、朝日、毎日などの主要全国紙も掲載を見送った
・ドイツの積極的な移民受け入れ政策:メルケルの方針には、人道的配慮以外に、人口減少への危機感という思惑もあった
・中東からドイツへ向かう移民の群れが、その通過国に大きな影響を与えてきた
・欧州では、難民を受け入れるべきとの声と、イスラム人口急増、移民の流入を不安視する声があがっている
・まったく異なる文明の国から、ものすごい数の移民が波のように押し寄せている。その習慣や伝統は、我々とはまったく折り合わないものだ
・かわる北欧の寛容、国民と同化する移民は歓迎するが、イスラム教徒は国民が培ってきた価値観に溶け込まず、福祉を食い物にしているだけだと告発した
・イスラム嫌い政党が伸長するフランスや北欧には共通点がある。それは、福祉国家の代表格である上に、国の価値観に対する強烈な自意識をもっていることだ
・移民嫌悪の根っこは、経済や、福祉の負担だけではない。価値観の違いが大きい
・各国政府は一方で、イスラム教徒の若者にアピールするあめに、若くて有能な政治家を要職に起用する努力をしている
・日本が移民受け入れに消極的なのは、よく知られている。外国人が来れば、賃金が下がる、得をするのは大企業だけ。治安悪化をまねく、日本に多民族主義は合わない
目次
はじめに
1 過激派志願の若者たち
2 ホームグロウン・テロリスト
3 共存の葛藤
4 立ちはだかる壁
5 シャルリー・エブド事件の衝撃
6 イスラムと欧州政治
ISBN:9784106106491
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:208ページ
定価:720円(本体)
発売日:2015年12月20日詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスラム化するヨーロッパ。ヨーロッパで起きている数多くのテロ事件の背景にあるものや、ヨーロッパにおけるイスラム系移民の置かれている立場や現状がわかりました。イスラム化するヨーロッパの移民問題、今後これまで以上に移民が増える日本でも参考にできると思う。
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実際ヨーロッパに行くと、ムスリムの人たちが
多い。
宗教も違うし、絶対軋轢あるよなぁと、
思いながら読みました。
日本でもこのような問題が起きるでしょう。 -
2015年までにヨーロッパ(主にフランス)で起こったテロの背景をまとめてある。
印象に残ったのは
アイデンティティーの拠り所としてイスラム過激思想に傾倒していく若者たち、
植民化など含め難民・移民を労働者として自国に受け入れたのち、ヨーロッパ人種ではない移民は出ていけばいいと考えるヨーロッパ人、
フランスの掲げる自由にイスラムの習慣を選択する自由は含まれない、
今のヨーロッパは敬虔な宗教者は少ない。
どうしたら差別や暴力など負の応酬がなくなるんだろうと考えさせられる。 -
一連のテロリズムの背景にあるヨーロッパとイスラム文化の根強い確執がうまくまとまっており、勉強になった。
本書のいうヨーロッパは、ほぼフランスのことを述べており、元大統領のシラク、サルコジは、政教分離を盾にベール禁止を法律化し、さらに国民の約8割はそのような政策を支持しているというから驚いた。
フランス国家は自由と平等を謳っているイメージが強いが、あくまで「我々に同化する場合にのみ自由と平等を付与する」という姿勢が、ホームグロウンテロリストを育んでしまっているように思う。
憎悪は物事の見方を変える力を持つ。お騒がせB級新聞(シャルリー・エブド)は自由の闘士に、異端扱いされた極右政党「国民戦線」は、反移民を訴えるポピュリスト政権へと変化した。
テロリズムは決して許されることのない卑劣な行為だが、批判するからにはそれが生まれた背景も知る義務があると思う。これを読んでから、イスラム論争に関する報道をこれまでとは違った視点から見ることができるようになった。 -
第二次世界大戦後の経済復興を支えたイスラム系移民たちの二世が、ホームグロウンテロリスト(Home-Grown Terrorist)として彼らの祖国の脅威となっている。経済成長が陰りを見せ、ヨーロッパの各国では移民たちを祖国に戻そうと思いこれ以上の移民流入を防ごうと思ったがそれは叶わず、その後増え続け今では各国の10~15%がイスラム系移民が占める現状。
戦後に来た移民たちの子供が出生国で市民権を得て現在二世三世としてヨーロッパで生活をし、約2000万人のイスラム系移民が存在している。
フランスは政教分離政策を取っているため、公共の場での宗教色を排除すべく国民の1割を占めるイスラム教女子の公共の場でのスカーフの着用の禁止を始めた。ブルカ禁止法まででき、ベールを被るというのは女性蔑視の象徴であり、女性の自由と尊厳を重視するフランスの考えでは、ブルカは歓迎されないというもの。フランスだけでなくその他のEU諸国でも禁止法が広まっていく。ベール禁止法の背景にはイスラム教徒の信仰表明に対する違和感と嫌悪感があるのではとまとめられている。
国としては国勢調査で宗教を問うことなどは決してしないフランスだが、国民間での格差や差別は蔓延っており、それがシャルリー・エブド風刺の事件に繋がる。首謀者はホーム・グロウン・テロリストであった。
そして今回の2015年11月のパリのテロ。
イスラム嫌いのフランスや北欧の共通点は国の価値観に対する強烈な自意識があることと欧州福祉国家の代表格であること。自国民への自由と平和を強く願うこれらの国々がイスラム嫌いを強めていっている。イスラム教に対しては宗教の違いというレベルではなく、一つの異なるイデオロギーの存在という認識が広がっている。
まだまだ弱いイスラム教徒の政治参加。この政治参加の低さは非イスラムにとっても好ましいものではない。それぞれがコミュニティを築き過激派の温床を増長するにすぎないからだ。
日本は所得が高いのに難民を受け入れない国として名前がアムネスティインターナショナルに挙げられた。これから低下し続けるであろう日本の人口を考えると「移民」という概念を対岸の火事と考えるのは宜しくない。
他の宗教との共存は、常に相手への「敬意」を払うことから始めるべきである。
出だしから知る事実にぞっとする。でもただ恐れるだけでは問題解決はできない。正しい理解・認識から始め、どのような形で平和に異なるイデオロギー・価値観を持つ他者と共存していくことができるのか身の周りの人間関係で考え実践していくことが私達にできることであるなぁと思う。 -
ヨーロッパが直面してきたイスラム教や移民の課題について考察されていた。イスラム教だから過激というのではなく、社会に残る差別や格差が結果として過激派を生んでいるんだと思った。日本においても受け容れなければ人口減少が進んでいく中で、どう移民を受け容れていくか自分ごととして考える必要がある
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先進国は軒並み少子化の課題を抱えているが、欧州のドイツや極東の日本は顕著だ。特に日本は現在の出生率がつづけば2060年頃には人口も8,000万人台に落ち込み、日本中の多くの地方自治体が消滅する事が予想されている。現在でも既に働きて不足は顕在化した問題として捉えられ、転職市場では若い世代だけでなく、40〜50台までの管理職クラスまでもが奪い合いの状態だ。ここ数年、欧州の移民問題だけでなく、アメリカのトランプ政権に代表されるような極端な自国第一主義、自国民優先が表に出てきて、外部からの移民流入には各国とも慎重な動きが目立つ。だが、前述した様に日本の少子化対策が上手く進まなければ経済は縮小の一途を辿り、起業経営者も海外からの受け入れの是非を決断する時期が来た様に思える。それを国がどう受け止めるか。巷ではコンビニや家電製品売り場まで、ベトナム人の名前や中国人名に溢れているが、事業会社や会社経営により近い組織などでも既に「カタカナ名」がいる事自体が当たり前になってきた。
本書は主に欧州でこれまでに発生してきた、キリスト社会とイスラム社会の対立に焦点を当て、これから欧州各国が移民に対してどの様に向かい合っていくか、更には日本はそこから何を学べば良いかを教えてくれる。
これまでの欧州は正に「文明の衝突」とも言える様な、フランスの同時テロやスペインの列車爆破、ベルギーやデンマークでのテロなど、観光に適した安全な国がテロの現場、戦場と化してきた。欧州はこれまでもシリア内戦やその他の地域からも人道支援的な立場から難民を多く受け入れており、今それらの2世3世が移民先各国で国籍を持ち、自国民として生活している。そうした世代が直面する差別や給与格差は確実に熱気を帯びてイスラム化への原動力となっている。やり場のない怒りを吸収し、イスラムの思想の中でも一部の過激な組織は力を付ける。そうした組織が裏で手を引くテロは「ホームグロウン・テロ」(移民先で生まれたテロリストが引き起こす意)と呼ばれ、わざわざ海外から危険を犯してテロリストを派遣潜入させるよりもよほど簡単な手段となっている。ネットを見ればいつでも勧誘動画は見る事ができ、若者がそれらに感化されテロリストになるリスクは大きくなっている。
フランスで話題になった「ブルカ法」などはそうしたテロリズムへの恐怖と、自国のアイデンティティに染まらず、クルアーンの教えに厳格であればあるほど溝を生む構造が生み出したものだ。本書は「私はシャルリー」運動も重点的に触れられており、欧州の移民政策の顛末から読者へ問題の本質を考える様呼び掛けてくる。
日本の今後を考えていくためにも一読しておきたい一冊だ。 -
欧州におけるイスラム勢力の台頭を多数のニュースとともに紹介。事実の羅列が長く、冗長。読むのが苦痛なほど。
そして背景とか今後の展望とかは少ない。
よって、資料として。
読了45分 -