- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784584123003
感想・レビュー・書評
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4年前のだけど資料として手元にあったので読んだ。
・資産も計算に入れれば日本の債務水準は高くない。財政危機じゃない。
・消費税の納税義務があるのに取引きに転嫁できない零細事業者が自殺することになるから税率アップ反対
・輸出大企業は払ってもいない消費税還付金で儲けるはず。
・高額所得者の所得税率は昔から段々低くなっている。低所得になるほど所得に占める消費の割合が高くなって、税負担も上がる消費税は反対。
・アメリカは徴税の費用が税収増を相殺するから消費税(付加価値税)は導入してない。
・英国などではゼロ税率なんかもあって、税率高いはずの付加価値税は生活に影響少ない。
・日本企業の法人税の限界実効税率は20%台だから外国と比べてもそれほど高くない。法人税が高いというのはマスコミのウソ。
源泉徴収の対象が日本はよそより広いとか、この仕組み作った国税庁OBの租界発言とかは勉強になった。 -
文字通り、消費税増税で日本経済が崩壊するということを書いた一冊。
消費税は逆進性があるので、言ってることは頷けるものの、それに対してどうすれば良いのかというのが弱く感じた。 -
確かに前著の講談社現代新書『消費税のカラクリ』や中公新書『源泉徴収と年末調整―納税者の意識を変えられるか』とダブる部分はあるが、斎藤貴男氏の腐心により、よりわかり易くポイントだけに絞っている分、前掲の2冊より読み易い。
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個人的な話だが、昨年末から今年の初めにかけて、仕事の関係で税について少し調べていた。いろいろな本を読んだけど、消費税のように進行中の事柄をある程度突っ込んで調べるには手軽に読める新書という形態が最適だ。そのかわり掘り下げは深くないし、この一冊ですべてがわかるという訳ではないけどね。
そんな感じで読み始めたんだけど、実際、消費税と税に関する認識がずいぶん変化したように思う。
今まさに増税議論のまっただ中にある消費税。僕自身、勉強するまで、消費税に対するイメージは「みんなが公平に負担するもの」「諸外国に比べて日本は税率が低い」といった程度のものだった。恥ずかしい限りだが、でも言い訳すると、日本の一般的なサラリーマンの認識なんて同じようなものだと思う。あんま深く考えてなかったというか…。いやまあ、自分でも驚いたんだけど、この本を読んでこれらの認識がずいぶん変化したのだ。
とりあえずだが僕がこの本で初めて知って驚いた事を挙げていくと、
・正社員から派遣社員にすると節税できる仕組みがある。
・国税収入全体に占める割合でいえば、日本の消費税5%はスウェーデンの25%分に相当。
・アメリカにはそもそも国税としての消費税がない。
・輸出品は消費税を還付されるため、輸出企業は消費税が上がるとその分儲かる。
読み進んでいく中で最も戦慄したのは、消費税がちっとも公平な税ではないという事だ。僕もそんなに詳しい訳ではなく、まだ頭の中で整理している段階なので詳細な説明はできないが、大雑把に言うと消費増税で負担がかかるのは弱い立場の人たちなのだ。大企業が優遇されるようにできている。個人の尊厳を軽視し、大企業の利益を優先する発想で仕組みは構築されている。
そこに小泉改革から続いている新自由主義の暗部が浮き彫りになる。「貧乏人は市場から退場せよ」という思想。「努力をすれば上に行ける」構造をつくることで、「上に行けない者は努力をしていない」「そういう人からは金を取ってそれを上に回していい」という流れを作ってしまい、その中で医療・福祉・教育といった分野まで切り捨ててきた。2000年代後半の景気拡大期において、サラリーマンの平均給与が下がり続けた現実。浮ついた構造改革の高揚感の中で、僕らはずいぶんとんでもないことをやらかしたのではないか、と今更気づいても遅いのだけど。
そしてもう一点、自身を振り返ってかなり反省したのは、この本でも多くのページを割いて説明されている、サラリーマンの給与の源泉徴収という仕組みだ。
正直僕もこの便利な制度のおかげで自分がどのようにして税金を納めているかなんて考えもしなかった。逆にそういう風に一個人が税金のことまで考えなくてもいい、というのが源泉徴収の「美点」だと考えている人さえいる訳で、これによって日本の労働者の多くを占めるサラリーマンは複雑な税金の仕組みから目を背けさせられている(背けている事ができる?)。
源泉徴収は納税に関する労力や時間が一切かからないという事でサラリーマンにメリットがある制度だと思われているが、実は徴収する側に大きなメリットのある制度なのだ。だから我々は、多くの手間を割いて税金と向き合うか、個人としてのプライドを放棄して楽な源泉徴収に委ねるのか、自分で考える必要がある。
少なくとも、税金の事を考えている暇があるならもっと仕事をせよ、という風潮が正常なのか、見直さなくてはいけない。
消費税論議の前にまずはそこから、なのかも知れない。
著者の斎藤貴男氏は有名なジャーナリストなのだが、今までその著書を殆ど読んだ事がなかった(『ゴルゴ13』のさいとう・たかを氏と混同していた位だ)。斎藤氏のすごいところは、以上のような税や消費税に関する議論を、国税庁のホームページで公開されている統計など誰でも手に入れられる資料を駆使して説明している点だ。
消費税の仕組みは一般的な思いこみとは裏腹に、あまりにも複雑である。消費税が増税されるという事は、単に税負担が高くなるから生活が苦しくなるというだけの問題ではない。その事に斎藤氏は強い怒りを感じている。騒ぎ出さない国民に必死で呼びかけている。
無論、この本が書かれた当時とは日本全体の状況が変わっている。言うまでもなく3月11日のあの震災の影響である。あれ以来、日本の政治や経済は混迷し続けている。
しかしだからこそ消費増税も一層深く議論されなくてはいけない。増税やむなし、という結論もあるだろう。ただし、震災の混乱の中なんとなくそれ位はいいんじゃないの、という態度で増税を受け入れる態度だけは避けなくてはいけない。
僕がこの本で最も強く感じたのは、増税に対する賛否の前に、税に対する国民の無関心・無気力の恐ろしさだった。 -
デフレが10年以上継続しているため税収は落ち込んでいるようで、国債発行量が増えているのは懸念されていることです。税収を増やすためには消費税しか無いのでしょうか。
私は消費税が導入された1989年4月前後や、消費税が5%へ引き上げられた前後を知っている世代ですが、導入される前には「駆け込み需要」があったかも知れませんが、その後の景気の落ち込みは凄かったのを覚えています。なので、この本のタイトルである「消費増税で日本崩壊」というのもあり得るのではないかと思いました。
以下は気になったポイントです。
・最終消費者の手元に届く商品の値段が税金の塊にならないように、必要経費に上乗せされて支払った消費税分を差し引くという「仕入れ税額控除」方式を使う(p30)
・約900兆円の国債発行残高があるが、その多くは建設国債が占めている、その政府資産を民間に使用させず赤字にカウントすることが問題(p46)
・日本の国税収入に占める消費税の割合は(22.1%)は、消費税率が25%のスウェーデンと同じ(p52)
・ゼロ税率は非課税と異なり、最終的なサービス提供の段階では消費税がかからないが、仕入れをはじめとする主な必要経費の支払いの際にかかった消費税分は、申告により還付される(p55)
・アメリカが消費税に慎重なのは、消費税が貧困層を追い詰める結果、福祉ニーズが拡大して犯罪や自殺の対策費が膨らむことを恐れている(p60)
・売上高が1000万円未満の事業者には納税義務は課せられていない、免税点が2004年に改定されるまでは3000万円であった(p61)
・正規雇用を減らし、必要な労働力は派遣、請負等の別の事業者に外注する形にすれば、それでけで大幅な節税となる(p66)
・消費税は、国内の取引にのみ課税されるもので、輸出や国際輸送等の取引は免除される(p78)
・大手企業が「輸出戻し税」として還付される額は大きい、1位のトヨタ自動車は2009年実績で2108億円、2位のソニーで1060億円(p81)
・所得税法上では、源泉徴収方式(1940年に導入)は8割を占めているが、特例として構成されている(p95)
・源泉徴収を採用する国はおおくあるが(デンマーク、オランダ、スペイン、ギリシア、フィンランド、韓国、インド、タイ等)、企業に徴税事務を依存して年末調整制度を整備している国は珍しい(p103)
・給与所得控除額は平均で30%程度もある、年収400万円で134万円(36%)、年収750万円で195万円(26%)もある(p132)
・サラリーマンが自営業者に対して得をしているのは、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)であり、半額を企業が負担している(p133)
・2007年改定の所得税は、年収900万円超が33%、年収1800万円超が40%であり、差は7%のみ、金持ち優遇制度である(p136)
・法人税については、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる仕組みがあり、2004年に5年から延長された(p148)
・消費税という税制が、取引先と力関係で弱い中小零細の、とりわけ自営業に重い負担を強いるシステムであり、消費税10%時代に耐えるのは難しい(p167)
・2009年に発生した国税の滞納額は、全税目で7478億円で、消費税はその50%の3742億円(消費税収:44兆円の22%の約10兆円)である(p172)
2010/12/26作成