いくつも存在するホームズ譚パスティーシュとは一線を画し、世界で始めて公式認定されたという六十一番目のホームズ作品。
あの愛すべき二人にまた会えるのだと、期待で胸をいっぱいにしながら読み始めました。
事件が起こった舞台は「最後の事件」の前年。
ワトスンがこの事件をその時なぜ記録・公表しなかったのかは、序章で『ホームズの名声を傷つける恐れがあるから』『あまりにもおぞましい、身の毛がよだつような事柄が含まれているから』と語っています。
老年期ワトスンが、今は亡き親友に想いを馳せながらこの事件を書き起こし、その後、原稿を銀行の金庫に保管して100年後に開封する指示を添えるという設定。
『未来の読者ならば私の時代よりも醜聞や堕落に対して耐性があるだろうと見込んで...』
ワトスンが当時 記録として残せなかったというだけあって、事件はこれまでのものとは毛色の違う悲しい内容でした。
いや、殺人に悲しいも悲しくないもないのだけれど、それでも今回は大人に見捨てられた子供達が話の核で、また殺されるのもその子どもだから救いがありません。
複雑に入り組んで、解きほぐせないほどにもつれ合あった事件。
一見何のつながりもないような事柄が最後1つに纏まるところは見事です。
読みごたえもさることながら、ホームズ・ワトスンの個性・魅力も存分に味わえる内容だったので、今もまだ、再会の余韻に浸っています。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリー
- 感想投稿日 : 2016年6月15日
- 読了日 : 2016年6月10日
- 本棚登録日 : 2016年6月10日
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