伊井直行『さして重要でない一日』講談社文芸文庫版。
以前読んでいたんだけど解説が柴田元幸せんせいということで再読。
「会社員小説」という特異なジャンルを切り開いた作家の初期作品で野間文芸賞受賞作。
地の文の与える奇妙な印象はいろんなところで言われるけど、
それこそ「会社」というなんだかわからんものの体内で生きている
「会社員」っつう奇妙な生物の住む環境のアレゴリーでござろうな。
一人称と三人称が溶けたような、誰の視線かわからない眼に監視されて
(しかもその視線は彼の眼にすら起源している瞬間がある)動き続ける「彼」。
テキストの間から実存のうえに、不可思議な「相」が立ち現われてくる。
生々しいぬう。
こういう文体を獲得するにはそうとうな試行錯誤が必要だっただろうなと思う。
東電の社員に読ませたい本。
それにしても講談社文芸文庫は高いお・・・
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文庫・新書
- 感想投稿日 : 2012年5月16日
- 読了日 : 2012年5月16日
- 本棚登録日 : 2012年5月16日
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