「李歐」は、この作品を下敷きに文庫版で書き下ろしにされた作品。「李歐」の方が、たしかに作品としては完成されているけれども、これはこれで、ひとつの読み応えのある作品になっている。
登場人物はもちろん、ストーリーの骨組みは「李歐」と同じ。ただ「李歐」に比べると、登場人物たちがより感情的で、その分、より浅はか。ストーリーのつながりが苦しいところもある。作者にしてみれば、ちょっと作品を書き直したくなるのが、なんとなくわかるような感じだ。でもそういう部分が逆にこの作品を、裏切りや陰謀が横行しても明るく、華やかな「青春小説」といったような趣きにしている気がする。
しかし高村薫、やっぱり女性の描き方は下手なのかもしれない。主人公の吉田一彰が、敦子という女性に長年惹かれる意味なり背景なりがよく理解できない。だからこそ、「李歐」では、敦子の露出は格段に減ったのかもしれない。まあもしかしたら、この作品を書いた頃が下手で、今では上手なのかもしれないが。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
国内小説
- 感想投稿日 : 2011年7月20日
- 読了日 : 2006年1月15日
- 本棚登録日 : 2011年7月20日
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