この映画をきちんと語れるだけの準備が、私にはできていない。観終わって、簡単に感想が言えない。何度か観ないと、消化できない映画。
主人公ダニエルは決して好感のもてる人物ではない。
人の事が信じられず、利己的。石油で得た富はあるが、人との関係はうまく築けない。築こうとしない。
こんな人物が自分の近くにいたら、私はなるべく関係を持たないように避けるだろう。それくらい違和感がある。
ただ、映画を観ているうちに他人事に思えなくなる。この主人公は自分ではないかと。
それは、この映画が、一人の人間を静かに掘り下げることで、人間共通の業の深さを共有することに成功しているからではないか。
牧師のイーライ・サンデーも、いわゆる矮小で悪魔駅な人物だが、皆、多かれ少なかれ、イーライのような虚栄心を持っているのではないか。
すぐに感情的になってしまうイーライだが、狂信的に信者をあおる。この演出が、少しわざとらしく。ベタベタな演技に見えてしまう。(「マグノリア」のトムクルーズにも同様のことを感じた。)
ここだけがこの映画で私がついていけない点。
全体的な映画の雰囲気に、偉大な、スケールの大きな物語も感じたし、一方でどうしようもない一人の人生のプライベート性も感じさせる。中々深い映画だと思う。テイスト的にはテレンス・マリックにも似ているのではないだろうか。
油田の試掘の際の爆発事故の映像の美しさ。
火山の噴火のような、自然の暴力的な力。
卑小な人間がこの大きな力を呼び出す悪魔的な場面。
そこで、自分の子供を悪魔に売り渡し富を得たようにもある意味解釈できる。
そんな善悪を含み、人間の醜さもすべて含めた美しさが表現された、恐ろしい映画だと思う。
(ポール・トーマス・アンダーソンが、主演のダニエル・ディ・ルイスに送った、映画「黄金」も人間の醜さが良く表された力強い映画でした。)
- 感想投稿日 : 2017年12月10日
- 読了日 : 2017年12月10日
- 本棚登録日 : 2017年12月5日
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