ポンドからドルへの基軸通貨の変遷や金本位制からドル本位制への移行がいかにして生じたかという歴史をたどることで、金融力という概念が経済力やその他の概念とは独立して存在するパワーであることを明らかにする。
その歴史はブレトン・ウッズ体制に象徴されるような国家間のパワーシフトという側面と、デリヴァティヴスをはじめとする金融技術の進化の側面を併せ持つ。基軸通貨=ドルに陰りが見え始めた21世紀、次の時代に向けた金融力を蓄えるためにとるべき方策とは何か、本書は明確にはしていないが、大筋でグローバリゼーションを背景とした金融自由化の流れを肯定していることは間違いない。
ただ、金融の自由化が様々なプレイヤーを金融市場に呼び込むことで、短期的な不安定や急変動が生じても長期的には安定した金融市場の成長が見込まれる、という著者の説は一見もっともなようだが、それはあくまで金融市場(関係者)にとってという前提でしかない。昨今のサブプライム危機や投機的資金によって引き起こされているとする原油価格の高騰をみても、その福利を享受している人々の傲慢が金融市場のリニアな発展を阻害する段階となりつつあるのではないか、という懸念を強くしている。
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- 感想投稿日 : 2013年12月23日
- 読了日 : 2008年2月9日
- 本棚登録日 : 2013年12月23日
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