日本の現代住宅〈1985‐2005〉 (Contemporary Japanese Houses)
- TOTO出版 (2005年12月15日発売)
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感想 : 11件
この本を最初に手にしたときは、そこに載っている住宅の醜さに読むのを諦めてしまいそうになるほどがっかりしました。ただ、なぜこれらの作品が日本の現代住宅の代表作なのかを知りたくなり、読み進めました。
最終的には、伊藤豊雄や隈研吾などの強力な論文を読み解くことによって、これら作品の意味づけを理解することができました。ライト、コルビジェ、ミースなどモダニズム時代のコンテクスチュアリズムから、ポストモダン時代のコンセプチュアリズムへと移行した結果、現代では批評性のみを軸とする建築が大半を占めてしまっている。それは結果として、一般人の審美眼からみて奇異に映る造形であっても、既存建築や社会に対する批評性を持っていれば良しとする現代建築の内向性が、本書のような作品集によって如実に露見してしまうことに繋がっている。
ただ、伊藤豊雄や隈研吾はそれを十に承知しており、自己批判を適切にしています。住宅ではないですが、「せんだいメディアテーク」や「那珂川町馬頭広重美術館」など2000年以降の日本建築がよりプラクティカルな提案として昇華されているのを見ると、モダニズムの影響から抜けきれずに、ポストモダンの迷宮を走っていた建築家達がやっと次のステップへと進みつつあるように感じます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
建築
- 感想投稿日 : 2012年1月7日
- 読了日 : 2012年1月7日
- 本棚登録日 : 2012年1月7日
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