パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考える

  • 英治出版 (2011年7月21日発売)
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感想 : 9
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エネルギー(電気だけでなく、ガソリンなども)をかなり多面的に
かつ、データも信憑性の高いものを使って分析している。

なにより、エネルギー問題を考える上で、非常に面白い前提をしている。
「エネルギー」と「パワー」の2フェーズで考えているのだ。

エネルギー:生み出されるモノの総量
パワー:エネルギーを変換して行う運動

物理的な発想だが、ある種会計的でもある。
エネルギーがストック概念であるのに対し、
パワーはフロー概念なのである。

エネルギーを生み出すだけでは、何も恩恵を受けない。
あくまでその先のパワーにこそ恩恵がある。

その前提をおいて、筆者は様々なトピックスを

①エネルギー密度(面積・体積ごとに生み出されるエネルギー量)
②パワー密度(面積・体積ごとに使えるパワー量)
③コスト
④規模

の側面から評価する。
再生可能エネルギーについては
①~④について、現状劣っているのに加え、今後の進展にも疑問をもっているようで
なにより促進するあたり、エネルギー密度を補うだけの土地をどう提供するのか、また、送電線をどう設計するのかなど、現実的課題を淡々と述べている。

結論は、アメリカにおいてはシェールガスがかなり豊富にあることがわかったため、
シェールガスと原子力に集約されるという。

当然、3.11以前に書かれた本であることも踏まえると
原子力が必要である、と簡潔に結論づけることは到底できないが
持たざる国である日本において
特に「密度」の視点、加えて「リスク」についてももっと多面的に議論した上で
よりよいエネルギー政策を策定するべきだという示唆は得られた。



かなり網羅的にトピックスを洗っていくので
興味のある人は読み通しても良いが
つまみ読みしても十分面白いと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エネルギー
感想投稿日 : 2012年1月2日
読了日 : 2012年1月2日
本棚登録日 : 2012年1月2日

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