6年ぐらい前に友人から薦められた。今年の始め、本屋でふとそのことを思い出して探してみたらあったので買ってきた。
表題作の「おごそかな渇き」を一番最初に読んだ。書きかけで絶筆となった作品。テーマが深くそれだけに残念だった。
西洋文学に深くはまり込んでいた自分にとって、日本が舞台の小説は、特に古びた日本の背景は、何となく受け付けなくて、「おごそかな〜」以外はずっと手をつけずに机の上に置きっぱなしにしていた。ある折に、ふと読み始めた所ぐいぐいとひきつけられて、忙しい仕事のあいまに少しずつ読み進めながら気付いたら読み終わってしまった。ものすごく良かった!
近代化が進むそれ以前の日本。人の心、言葉が今よりもずっと重みがあった時代。言葉にしてしまうと心が決まり、環境がそのように動き出す。自分のする事に責任を強く意識していた時代。今よりもずっとずっと人の心が単純で深い時代があった。そんな時代に生きたことがない自分だが、この小説に懐かしさを感じるのは、今も昔も変わらずに人の心にある純粋な思いが現れているからだろう。
「かあちゃん」「鶴は帰らぬ」「あだこ」がよかった。「紅梅月毛」「しょうしょう十三年」も良かった。他の作品も良かった。山本周五郎、大好きになった。
08/7/29
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(日本)
- 感想投稿日 : 2008年7月29日
- 読了日 : 2008年7月29日
- 本棚登録日 : 2008年7月29日
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