人生の旋律 (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年5月22日発売)
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感想 : 12
3

 かつて「大名」とまで呼ばれた男のお話。本人へのインタビューを基に組み上げた口伝。その経歴をちょっと本書より引用。

 「大正時代から海外を行き来する家の、典型的なお坊ちゃまだった。」ところが、父の事業が失敗。「家業は破産。父親は家族を置いて米国へ逃避。 ドン底の貧乏が続き、一時ヤクザ稼業に身を落としたものの、その後、更生。」「自力で慶應義塾大学へ入学。学費が支払えないので始めたアルバイトの音楽バイトが大ヒット。日比谷公会堂で定期的にコンサートを開き、ブロマイドが飛ぶように売れる。」「太平洋戦争開戦後、志願して陸軍に入隊。任務は、北朝鮮の[……]金日成の捕殺。」「戦後はGHQ、マッカーサー元帥の下で働くことに。 朝鮮戦争勃発時に自ら商社を創業。[……]大富豪に。ところがポンドショックで会社は破産、巨額の借金を抱える。」「ひょんなことから出会った岸信介元首相の渉外担当顧問を三二年にわたって務め、そのあいだに九年かけて借金を返済。西部石油株式会社の理事をはじめとして、企業コンサルタント、政界フィクサーとして活躍。その後、齢七二にしてオーストラリアに移住。」

とまあ、そんな人生。その男の名を近藤藤太(トウタ)といいます。にわかには信じられない眉唾物の人生ですな。っていうか読み終わった今でも、あんまり信じられていないです。いや、すごい人がいたもんだね。

 筆者の神田さんは「七〇年周期説」を唱える方のようです。簡単に言えば、七〇年周期で歴史は繰り返す、という考え。本書の目的も「近藤藤太が生きた大正・昭和の物語を読みながら、その七〇年後に生きる自分をダブらせていただくと、将来に対する心構えができる」と述べています。
 ・・・というのを読み終わってレビューを書いている最中に思い出しました。うっかりトウタの行動を中心に読んでいたので、すっかりその社会背景とかは考えなかったです。しまった「将来に対する心構え」なんてできてないよ・・・。

 さて『五体不満足』の乙武さんなんかもそうなんですが、やっぱり「行動した者」こそがスゲーって考える話は多いですね。周りにいる人を見ても、能動的に動いている人なんかはスゲーなーって思っちゃいます。自分も動かなきゃいけないなーっていつも思います。まずは、思うだけ。これからは本当に動いていかなきゃいけない気もします。っていうか動きます。F.I.D、ファイト一発ドンと行け、って感じですね。byジュブナイル。

 なによりも「近藤藤太」というその人を知れたことが収穫だった本です。


【目次】
プロローグ
第1章 軍隊行進曲
 二〇〇三年九月 オーストラリア・ゴールドコースト
 一九四三年一二月 平壌
第2章 星降る夜に……
第3章 ニューヨークニューヨーク
 一九四五年一二月 釜山から博多、そして……
 一九四六~四九年 連合国軍最高司令官総司令部
 一九五〇年 国際商社の設立
 一九五三年春 ロンドン 英国海陸空軍協会との交渉
第4章 薔薇色の人生
 一九五五年 ニューヨーク五番街
 一九七一年 東京でのクリスマス
 再び ― 二〇〇三年九月 オーストラリア・ゴールドコースト
エピローグ
あとがき

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2009年12月8日
読了日 : 2009年12月7日
本棚登録日 : 2009年12月7日

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