「ガード下」の誕生――鉄道と都市の近代史(祥伝社新書273)

著者 :
  • 祥伝社 (2012年4月3日発売)
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感想 : 14
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 僕の最寄り駅は東京メトロ・綾瀬駅というところでございます。本書のなかでも度々取り上げられているように、この綾瀬駅周辺というのは「ガード下」とは切っても切れない関係がある。そんなところで幼少期から過ごしていたため、僕にとってガード下は、そこがガード下であることも感じさせないほど、日常の風景でもあるわけですが、なるほど、言われてみればガード下はどこにでもあるわけではない。本書はそんな、人によっては日常であり、人によっては非日常である「ガード下」の魅力を再発見しようという野心あふれる一冊だ。

 ただ、本書には「ガード下」を「研究」の位置まで高めようとするコンセプトがある一方で、単なる「散歩案内」に終わってしまったというガッカリ感も孕んでいる。内容の展開的に、仕方のない部分もあるのだけれど、必ずしも肯定的な読後の感想ばかりではなくなってしまったのは残念だなあ。なんというか、「ガード下」論はまだまだ発展途上、本書は事始。今後の展開に期待ですな。

 個人的には、綾瀬駅にまつわる長年の疑問が、本書によって解決したので、満足感も十分に得られているんですけどね。


【目次】
まえがき
Ⅰ ガード下とは何か?―その定義と魅力
Ⅱ 生命力あふれるウラ町・ガード下の誕生
Ⅲ 高度経済成長に誕生したガード下―その再生とオモテ化
Ⅳ 新時代に挑むガード下―ホテル・保育園……
おわりに―庶民のエネルギーがあふれるガード下と、環境整備されるガード下
付録―さまざまなガード下遊歩

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 技術
感想投稿日 : 2012年7月29日
読了日 : 2012年7月29日
本棚登録日 : 2012年7月29日

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