バニラスパイダー(1) (講談社コミックス)

著者 :
  • 講談社 (2010年4月16日発売)
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本棚登録 : 313
感想 : 42
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「血潜り林檎と金魚鉢男」に続き、もうひとつの阿部洋一作品「バニラスパイダー」!
 相変わらずどこか抜けている、とぼけた雰囲気はあるものの、今作の敵はエイリアン!問答無用で食べます!ツツジは存在感の薄さと蛇口(!)を武器に、エレベターをぶった切っていきます。

 エレベターとの戦いで描写されるのは戦闘の激しさだけではなく、ツツジの心境でもあります。人にほとんど気付かれず冴えない生活を送っていたツツジが、憧れの人を助ける。目の前だけを見て突進していく。
 そしてにっくきエレベターは、いつも人間の体に寄生して現れる…。目の前に立ちふさがる肉体と、街で平穏に暮らす人々の命。どうしようもない天秤に翻弄されるツツジやそのほかのキャラクターの心境が、丁寧に描き出されます。

 視野が狭く眼前しかみないツツジと、背負ってしまった「街を守る」という大きすぎる宿命。かなりシリアスですが、武器は蛇口で宇宙船はコーヒーカップ。ピンチの時にもゆるゆるな表現。クセになります。
 ちなみに、タイトルの意味は最後までさっぱりわからないままです。セリフにも出てきたのに!

 別冊少年マガジンにて連載され、打ち切りという形で終りを迎えてしまったこの作品。もし続いていたらどんな展開の可能性があったのか…!この才能を是非ご覧あれ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2012年10月9日
読了日 : 2012年7月25日
本棚登録日 : 2012年10月9日

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