繰り返される日常を一日切り取った、という感じ。前向性、及び逆向性の健忘という記憶障害により、35才の櫂は事故から5年で17年間の記憶を失っており、自身を18才と認識している上に記憶も13分しか留めておけない。一日に何度も新しくなる彼に悠児は自分を偽る嘘をつき続けるけれど、一貫してひとつだけ本当の事を伝える。これからも繰り返されるだろう嘘と彼の心を思うととても悲しい。
彼らの過去や事故のあらまし、悠児の心情が作中で語られる事のないもどかしさはあれど、それが描かれないからこその作品なのかも知れないと漠然と思います。
記憶を失う以前を思わせるような「櫂」の束の間の出現は悠児にとって喜びだったんでしょうか、それとも再度喪失を味わう悲しみだったんでしょうか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ホリーノベルズ
- 感想投稿日 : 2009年10月23日
- 読了日 : 2009年10月22日
- 本棚登録日 : 2009年10月22日
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