波打ち際で深く、深く目覚めている。濃密な夜がゆるやかに攪拌され、水平線の彼方から正体不明の予感をはらんだ音楽が流れてくる。
金属が擦れ合うみたいな無機質の白い雑音、物悲しくなつかしいオルゴールの音色。
黒い海がまばたきしたとき、その瞳に映し出される無彩色の幻燈は夢の裏側の出来事であるが故に、どこか現実の様相を帯びているけれど、ブランコを一漕ぎしたら空へ墜ちてしまうような奇妙な危うさがあって、心がざわつく。
それでも、簡単に眠りに身を預けられないほどには、この反転する世界の不可解な引力は強いらしい。
踊る熊が登場するというだけで心弾んでしまう【月へ行く鉄道】、孤独と死の影の揺らめきを感じながらも漣のような幸福感につつまれる【象が描かれた魔法の箱】が好き。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
芸術
- 感想投稿日 : 2016年8月30日
- 読了日 : 2016年8月30日
- 本棚登録日 : 2016年8月30日
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