千両花嫁 とびきり屋見立て帖 (文春文庫 や 38-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年11月10日発売)
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感想 : 52
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幕末を舞台にした時代小説ですが、幕末で活躍した志士たちを脇役にして京の都に道具屋を開いた若き夫婦を主役にとらえ、ある意味で”立場が逆転した”物語といえます。
一般市民から見た幕末の世を楽しむ一話完結型の小説です。

京屈指の茶道具店から駆け落ち同然で飛び出した真之介とゆずの夫婦が営む道具屋に訪れたり関わったりする客たちの中には
坂本龍馬、武市半平太、岡田以蔵、勝海舟、高杉晋作、芹沢鴨、近藤勇、土方歳三等々…とまさに幕末オールスター。名前はあまり出ていませんが沖田総司や田中新兵衛らしき人も登場します。
短い出番の中でそれぞれの志士たちの個性をよく捉えて動かしている印象を受けました。それはおそらく、真之介が観相学を心得ており初対面の相手の人相を「鑑定」して顔の特徴を詳しく説明をしてくれるのでイメージを膨らませやすくなっているのだと思います。
ただ、新撰組は真之介・ゆずに対して悪役のような扱いなのでファンにはお勧め出来ないのかもしれません。でも、虎徹を巡って近藤勇が気迫だけで二階から真之介を外に押し出してしまう流れには笑ってしまいましたが。
骨董品を扱う事もあるだけあって幕末志士に限らず、戦国時代の武将の名も突然出てきたりします。
物語の中心となる道具の数々もどこかで聞いたような名前が幾つか出てきてそういうことが好きな人にはたまらない作品です。

あと、真之介やゆずの方言も気持ちいいです。特にゆずの京弁は志士や読者たちをメロメロにさせている気がします。
どんなトラブルに巻き込まれても道具屋らしさで解決し、最終的には読んで恥ずかしくなるぐらいにお互い愛しあう幸せな夫婦で締める物語です。
しかし、大切な娘を駆け落ちで取られたゆずの両親の怒りを鎮めることは出来るか? 波乱に満ちてきた幕末の世の中を夫婦はどう生きて行くのか!?
今後の展開が楽しみなシリーズ物です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 幕末
感想投稿日 : 2010年12月10日
読了日 : 2010年12月8日
本棚登録日 : 2010年11月21日

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