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砂の上の植物群 (新潮文庫)についてのengrossedさんのレビュー


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レビュー by engrossedさん

文学   未設定  4  登録日: 2009年08月30日

 今日読み終わった。僕は今まで吉行という人の短編や大衆小説「すれすれ」などを読んでいたが、魅力を感じたことはなかった。体質に合わないのかなと思っていたけれど、これで吉行世界の魅力が分ったと思った。
 「砂の上の植物群」200ページ弱の作品だが、最初の100ページ目でしばらく別の本を読むために読み止しにして、1ヶ月近くたってから後半を読んだ。前半はわりとひらべったい、起伏のない、いろんなことをぎこちなく羅列しているような感じで、こういう渇いた無機質的、虚無的なのが吉行の売りなのかなと思いながら読んでいたが、後半になってにわかにストーリーが展開していく。前半に、ストーリーの途中で作者が登場して独白を始めるなど、小説としては特異というか不自然な手法が、後半にはにわかに必然性を帯びてくる。前半に出てきた夕陽の何気ない風景、登場人物が、後半では主人公の内面と結びついていく伏線であったことが明らかになっていく。その技巧の確かさが、この小説を完成度の高いものにしていると思う。
 吉行はなぜ性を書くのか?そこには彼が単に遊び人というんじゃなくて、彼の存在、内的必然性をかけたいきざまがあるということもこの小説から読み取れる。僕はわりと抽象的、観念的な思考が好きだが、性というものは、その対局にあるのではないか。つまり、性に関われば、常にそこには具体的で生理的なにおいや熱や昂奮があり、それによって抽象的、観念的な饒舌さを退けることができる。この小説を読みながら僕はそんなことを感じていた。吉行にとっての性はその意味で、禁欲的でさえあると僕には思われた。吉行にも観念的な傾向があることは、小説中のクレーの美術論の引用などで察せられるが、その観念論を扱いながら、あくまで具体的(=観念論を排する禁欲的)な次元で中年男の人生の格闘を描いている。 レビュー登録日 : 2009年08月30日


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