ある島の可能性

  • 角川書店 (2007年2月28日発売)
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本棚登録 : 310
感想 : 23
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クローン技術が発達すれば生殖行為は必要なくなるだろう。『素粒子』の続編という位置づけかもしれない。未来の世界が描かれてはいるけれども、これはSFではなく、クローン技術もカルト宗教も、いまの全世界の人類にはずいぶん身近な話題で、読者に馴染みのある現代が描かれている。あまりにも具体的な固有名詞が多すぎて、誰かに訴えられそうなくらいだ。
ウェルベックの作品に脈々と一貫している思想である、生きていくことへの疑問、性欲の強迫観念、さらに今回は加齢の恐怖が追加。小説に出てくる宗教団体は、おそらくラエリアン・ムーブメントという実在するカルト宗教がモデル。どこの宗教も基本的には似通っている構造であることよ。
なぜ書くのか、そのウェルベックの信念が主人公ダニエル1とシンクロする。読者は未来の世界を見つめることができるだろう。この物語は、いったいどうやって終わるのかなと思ったら、最後の最後まで、ある世界が丁寧に描かれていて、うーん脱帽。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸
感想投稿日 : 2011年8月4日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年7月20日

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