2006年 日本
1968年12月10日。高校生のみすずは、男物の警察官の衣装に身を包み、府中刑務所脇で白バイを走らせていた。目の前には東芝府中工場のボーナス三億円を積んだ現金輸送車。一気にバイクを加速させ、輸送車に向かって叫ぶ。「止まりなさい!この車にはダイナマイトが仕掛けられている――。」この日から遡ること数年。みすずはひとり孤独の中にいた。家にも学校にも居場所はなく、誰にも心を開かない毎日。ずっとそんな日々が続くと思っていたとき、みすずは新宿のジャズ喫茶Bで謎めいた東大生の岸とその仲間たちに出会う。生まれて初めて味わう“仲間"という温かい感覚。そして、みすずの中に生まれた初めての恋心。みすずと岸はどんどん惹かれ合っていく。その恋が、歴史に残る大事件を生むとも知らずに。そうして迎えた1968年12月10日。何故、18歳の少女は三億円を盗むに至ったのか。そして、事件に交差していく二人の恋の行方は・・・。
題材の事件は未解決事件として当時は相当マスコミの過熱報道もあったようですが、私はまだ生まれておらず詳細は知りませんでした。それでも、この映画は真相なんじゃないかと思った。まさかという思いもあるけど、でも妙に筋が通っていて成功してしまってもおかしくない。犠牲者はいないし3億円も使用されていないという点からも、岸の動機は納得できてしまうんだよね。本当だとしたらなんという切ない話だろうと思うけど。
わりと単調だし前半はBでの日常もあっという間に過ぎて、岸とみすずが近づく要因もいまいち描かれないので唐突な感じも多少あるが、作品自体の空気感がとても好きだ。レトロな世界を知らない私は想像するしかないけど、きっと昭和はこういう時代だったんだろうと思える。混沌とした社会で、孤独を感じる二人が出会って、寂しさを埋めるためや自分なりに立場や権力に反するためだとしても、事件後にふたりで座っている場面を見ていると、最後はやっぱり一緒にいられたらそれだけで幸せだったんだろうなと思う。岸はみすずを守るために自分が近くにいられないことを悟ったんだろうけど、それでも彼女を愛していたことに変わりはなくて、詩集の言葉には泣けました。感情には時効なんてないよね・・・宮﨑あおいちゃんの演技が光りすぎて他の俳優さんたちがかすむレベルですが、透明感のある彼女に胸が苦しくなるほど惹かれました。原作もぜひ読んでみたいと思います。
- 感想投稿日 : 2015年11月21日
- 読了日 : 2015年11月21日
- 本棚登録日 : 2015年11月21日
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