日本の大復活はここから始まる!

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  • 小学館 (2011年4月14日発売)
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感想 : 17
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著者は経営コンサルタントで自民党の政治家。他の経済評論家と異なる独自の視点で日本経済と世界経済を語るので、読んでいて発見があり面白い。

<印象的な箇所>
・規制緩和、生産性向上、財政削減、増税は物不足、生産不足であるインフレ期の政策。今の日本は供給力過剰のデフレなのだから、世論と異なり財政緊縮はやめて、国債の発行額と公共事業を増やすべき。
・ベストセラー『デフレの正体』は、人口減少がデフレの正体と言ったが、ウソ。ドイツもロシアも人口減少しているが、デフレではない。少子化もデフレの原因ではない。韓国、台湾、香港は少子化しているがデフレになっていないから。

・「日本の公務員が多すぎる」という通説もウソ。ドイツ、イギリス、アメリカ、フランスなど他国と比較すると、日本の公務員は極端に少ない。失業者が増えているのだから、公務員を増やして、公共サービスに若者を就かせるべき。
・「日本の道路はもう十分だ」という通説もウソ。保有自動車一万台当たりの道路の長さ、同高速道路の長さは、アメリカやドイツなどに比べて圧倒的に小さい。
・「日本経済は輸出依存」もウソ。輸出依存度(財の輸出額÷名目GDP)は日本はわずか10.71%。戦後高度成長期も10%前後であり、日本は個人消費がGDPの6割を超える内需主導国。韓国の輸出依存度は43%、ドイツ33%。これらの国が輸出依存だというのは納得できるが、日本を輸出依存というのは間違い。
・日本は自己完結型経済。輸出も輸入もGDPの10%。
・円高でも財政出動、金融緩和、市場拡大をすれば、内需は回復する。
・日本は貿易収支だけでなく、所得収支も黒字。所得収支とは海外の投資額。貿易摩擦、為替差損解消目的で、日本の自動車会社は海外に工場を作り、海外で生産している。故に日本の所得収支が増えている。
・サムスンなど韓国メーカーのテレビが世界で売れているのは、ウォン安のため。円高の日本製テレビと比べたら、圧倒的に安くなる。日本の自動車は、アメリカの工場で現地生産しているので、円高の影響を受けない。故に日本の自動車は、韓国の自動車メーカーに負けていない。
・韓国みたく各業界一社に独占集中すると、国内では競争が行われないので、国内消費者不利益になる。海外では、自国通貨安で安いから売れるだけ。
・アメリカの家電業界、医療業界は、訴訟リスクで崩壊。家電企業はクレームをうけ続けて、生産を縮小。医療サービスは患者からの訴訟リスクに備える為高額になった。
・日本がTPPに参加すれば、アメリカの法サービス、医療サービスが日本にやってくる。アメリカ式の訴訟社会、高額医療費、高額保険料社会になるので不利益。
・日本はギリシアみたく破綻しない。ギリシアは対外債務、日本は対内債務。これは大きく異なる。ギリシアは国債を海外に売っているが、日本は自国の貯蓄で国債を買っている。
・ギリシアは、ユーロに加盟していなければ、ここまで財政悪化しなかった。財政が悪化すれば、自国通貨安になる。そのおかげで輸出産業が伸びて、経済が回復する。ギリシアは財政が悪化しても、ユーロ加盟だから、通貨の価値が極端に変わらない。このため財政悪化がひどくなった。


・・・日本経済新聞など主流誌は、TPP参加が必要と呼びかけているし、国債が増え続けているのだから、財政圧縮、増税と言われる。しかし、デフレの時期に財政圧縮をして、増税したら、経済がますます悪くなる。デフレ期には財政を増やし、公共政策を増やし、公務員を増やして失業者を減らす。まあ財務省は増税を狙っているだろうから、著者が言うように事は運ばないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文科学
感想投稿日 : 2011年9月4日
読了日 : 2011年9月4日
本棚登録日 : 2011年9月4日

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