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「天狗岳に登ってきてくれんか」死期の迫った伝説的経営者上尾の依頼を受けた便利屋の倉持。山行の動画を撮る簡単な仕事のはずが、なぜか不審な影が。一方、元自衛隊特殊部隊員深江は、未解決殺人の対処に動く警視庁の儀藤に神出鬼没の殺し屋「霧」の追跡を依頼される。直後から何者かの襲撃を受け、奥多摩山中では凄惨な殺人現場に遭遇。その帰途、敵の車のカーナビに残っていた足跡を辿ると、目的地の病院で一人の男が拉致される現場を目撃する。直感に従い救出した男こそ、上尾にDVDを届けた倉持だった……。
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便利屋の倉持と元自衛隊特殊部隊員の深江の物語が並行して語られるが、どちらも物騒な気配が色濃く漂う。どこでどうつながるのか興味津々で読み進めると、次々に荒事が目の前で繰り広げられ、いつしかふたつの物語はひとつになっている。勝か負けるかが、すなわち、生きるか死ぬかというような過酷な状況に、息が詰まる心地である。誰を信じればいいのかも判らない世界で、それでも本能的に信じられるものがあるというのが不思議でもあり、当然のようにも思われる。結局、ほんとうに勝ったのは誰なのか。当事者それぞれが違う感想を抱いているのかもしれない。どんなに過酷な状況にあっても、まずは人間と人間の繋がりなのだと思わされる一冊でもある。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
あ行の作家
- 感想投稿日 : 2017年9月16日
- 読了日 : 2017年9月16日
- 本棚登録日 : 2017年9月16日
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