あの家に暮らす四人の女

著者 :
  • 中央公論新社 (2015年7月9日発売)
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感想 : 464
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〇洋館に住まう4人の女性の人生譚。三人称の楽しさと、次々起こる事件に河童の登場でイッキ読み!
杉並区の善福寺川沿いにある洋館。牧田家の長女佐知と、その母鶴代が暮らしている洋館に、佐知が雪乃を、雪乃が多恵美を誘い、4人で暮らすことになった。洋館では諍いなく日々楽しく暮らしているが、雨漏りやストーカー事件、開かずの間が開いちゃった事件など様々な事件が起こる。一生独身ではいたくない佐知たちは、この洋館や起こりくる事件の中でいったいどんなことを考え、行動するのか。

普通の小説と比べると、昭和マダムの丁寧な言葉遣いに加え、彼女らの和語のきれいさや名だたる文学作品の一節を取り出して心情を語ろうとするところが全体を通しおかしみを与えていて、漠然と好きだなぁと思う。加えて、作者も様々なインタビューで話しているが、三人称の語りが面白くて。情景や演技している姿が、まるでテレビドラマを見ているように、字幕放送を見ているかのように、伝わってくる様はどの小説でも体験できないのではないか。
そして男性の書かれ方も面白い。朴訥な山田さんやひょんなところから登場する神田さんらの、男らしくなく、女性に囲まれる男キャラっぽいと言えばそうなるだろう。ダメキャラの中に、一人だけ、佐知がお近づきになりたいと思う男性が登場することも、この物語ではアクセントになっている。
途中、起こる様々な事件は次にどうなるのか、と読者の興味もそそり、イッキ読みだ。

現代版「細雪」と帯文に書いてあるが、谷崎の細雪はまるで読んだことがない。しかし、ネットなどであらすじを調べてみるとなるほど近しい部分があるところを見ると、細雪のオマージュ、とも呼べそうである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(その他)
感想投稿日 : 2017年2月14日
読了日 : 2017年2月13日
本棚登録日 : 2017年2月14日

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