瑠璃の雫 (角川文庫 い 64-3)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年7月23日発売)
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ある日突然出て行ってしまった父、アルコール依存症の母、末弟を叩いて窒息死させてしまった弟、そんな家庭環境の中に杉原美緒はいた。美緒と弟は、入退院を繰り返す母の留守の間、母のいとこである薫さんと一緒に暮らす事になった。末弟を叩いて殺したという大きな罪を親から与えられてしまった弟はまだ小さく、無邪気なままで、それが逆に美緒の心をかき乱していく。両親が不仲になったのは弟のせい、時にそんな怒りが弟に向けられていく。「あいつ死んじゃえばいいのに。」 なのに2人の家族という繋がりが、逃れようもない強い絆として2人を繋いでいる。ある日美緒は、薫さんの知り合いの元検事、永瀬丈太郎と出会い、その優しさと人柄に少しずつ心を開いていく。。しかし丈太郎は愛娘の瑠璃という少女が誘拐されたまま見つからずにいるという大きな闇を持ち続けていた。やがてあるきっかけで、その闇の本当の正体を知る。。弟に向けた自分の罪、母親に対する大きな怒りと軽蔑、そして家族だからこその愛情と紙一重の憎しみ、どうすれば永瀬のように運命に降りかかってしまった罪を赦す事が出来るのか、それを見つけるべく美緒は、この事件を調べ始める。いろんな人物が交差しながら、この事件は予想もしない結末へと流れていく。時折ちらりと見せる伏せんのようなモノが、新たな展開への期待を駆り立てていく。
美緒の心情、怒り、悲しみ、葛藤の描写がとても痛々しく胸に突き刺さり涙がこぼれた。罪を与えてしまったもの、そしてその罰を受けるべきもの、何が罪で、何が罰なのか、何が正義で何が悪義なのか。家族とはなんなのか、考えさせられる作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: book
感想投稿日 : 2012年6月17日
読了日 : 2012年6月17日
本棚登録日 : 2012年6月17日

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