宇宙が誕生した瞬間から、「原大気」というべきものがあり、音が存在していた。
だから、人間だけが音楽を生み出したと考えるのは傲慢ではないだろうか、という問いかけから、この本は始まる。
なんとも壮大な話。
古今東西のさまざまな音楽と社会について、神、政治、権力、理性、芸術、大衆、自然などを切り口に俎上に載せていくのだが…。
例えば、音楽と政治。
取り上げられたトピックを拾ってみよう。
古代中国の「風」、つまり、民謡の採集と、そこから為政者が世情を読み取るという思想に始まり、西洋中世の軍楽隊、古代ギリシャの劇場文化、旧ソ連の音楽家の政治利用、現在のショパンコンクールの政治性、そして平安貴族の「楽」のたしなみ。
個々の話は興味深いものもあるけれど、話が拡散していくばかりで、音楽への理解が深まっていく感覚が得られない。
きっと著者の本領は、西洋近代の芸術概念の発生とその変遷のあたりではないかと思う。
そのあたりだけを、もう少し深く、体系的に書いてくれたほうがうれしかったのに。
江本勝の『水は答えを知っている』が、特段の注意もなく、無批判に引用されていたりするのをみると、他の部分の記述の信頼性についても不安になってくる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年9月30日
- 読了日 : 2017年9月30日
- 本棚登録日 : 2017年9月30日
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