狩りのとき (下) (扶桑社ミステリー ハ 19-5)

  • 扶桑社 (1999年9月30日発売)
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本棚登録 : 278
感想 : 12
3

『極大射程』、『ブラックライト』でもちらっと触れていた、ベトナム戦争でのある事件の詳細がやっと語られる。

上巻はダニーが主人公のような展開。彼の正義感やボブとの師弟関係など、読み応えはあるが、アプローチ部分が長すぎる(後々ここが重要になってくるのだが)のと、ベトナムでのパートがくどく感じたので、退屈のあまり飛ばし読みすることもしばしば。

下巻に入ると一気に展開が加速する。背後に隠された策略と、それに迫るボブ。この辺りのプロセスはいつもわくわくしながら読んでしまう。事件の骨格が二転三転する時のハンドルさばきがスムーズなのは、読者にとって非常に有難い。

そして大きな見どころは、スナイパー同士の攻防だろう。今までもボブを狙うスナイパーは登場してきたが、今回はレベルが違う感じ。静寂の中で相手を追い詰める狩りの緊張感は、本シリーズでしか味わえない醍醐味のひとつ。静と動のコントラストが抜群で、スローモーションで映像をイメージできる作者の描写もまた素晴らしい。

クライマックスのインパクトが大きいので、ラストが余計ドタバタしてるように見えた。少ないスペースに詰め込んで、無理矢理押さえつけたような印象を持ってしまったのが残念だが、骨太の秀作シリーズという評価は変わらず。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2011年7月7日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年7月7日

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