100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2011年5月28日発売)
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数学の発展と教育を目的として組織された、クレイ数学研究所なる団体があるさうです。この団体が、2000年(平成12)年に「ミレニアム懸賞問題」といふものを発表しました。100万ドルの懸賞金がかけられてゐるので、この名称になつてをります。さしづめ20世紀の数学界が遣り残した「宿題」と申せませう。
全部で七つあり、そのうちの六つはまだ解決してゐません。解決した一つが「ポアンカレ予想」で、これの証明がされた時は、結構なニュースになり騒がれた記憶があります。なにしろポアンカレが1904年に提唱してから、あまたの数学者の挑戦を跳ね除けてきた、まさに「100年の難問」ですから。

そのポアンカレ予想を証明したのが、ロシアの数学者・ペレリマン博士。
これほどの偉業を為した人ですから、「数学界のノーベル賞」といはれるフィールズ賞が贈られることになりました。ところが! ペレリマン博士は受賞を辞退し、懸賞金も受け取らず、社会と関はるのを避けるやうに姿を消すのでした。どうして?

『100年の難問はなぜ解けたのか』は、元々「NHKスペシャル」として放送された同名の番組を書籍化したもの。著者の春日真人氏はその番組を制作したディレクターださうです。
彼らは、行方が分からないペレリマン博士を探し、サンクトペテルブルグを皮切りに取材を開始するのでした。
果たして、取材班はペレリマン博士に会ふことができたのでせうか...?

そもそも、ポアンカレ予想とはどういうものでせうか。それは次のやうに表現されてゐます。
「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面に同相である」
わたくしには全くわかりません。著者がいろいろと用語を云ひ換へて素人に解るやうにい工夫するのですが、それでもわからない。
数学語と呼ばれる特殊な用語を駆使するため、一見日本語でも、まるで未知の外国語で説明されてゐるやうな気分になるのです。

それでわたくしは数学上の記述を完全理解するのは諦め、ポアンカレ予想に関つた数学者たちの栄光と挫折を描いたノンフィクション作品として愉しむことにしました。本書については、「掘り下げが足りない」「内容が浅い」との声も聞きますが、わたくしにはこれで十分であります。これ以上深く掘り下げられても、ついていけないのは明白。
数学語を知らない人向けの入門書として取り扱ひませう。

ぢや、また。

http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-503.html

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然科学
感想投稿日 : 2014年12月9日
読了日 : 2014年12月9日
本棚登録日 : 2014年12月9日

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