鍼灸の挑戦: 自然治癒力を生かす (岩波新書 新赤版 932)

著者 :
  • 岩波書店 (2005年1月20日発売)
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感想 : 18
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現在日本の鍼灸界は、大きく分けて古典派と現代派に分かれます。
 鍼灸ができた頃の古い書物に源流を求め、陰陽や五行などの理論を利用して配穴するのが古典派です。それに対して現代派は、現代生理学的な知識や西洋医学的な病名で病態を分類し、主に患部を治療し、場合によっては電気などを使います。同じ身体を診て、同じ鍼という治療道具を用いても、身体の診方や、病態へのアプローチには大きな違いがあります。
 このような違いは諸先生の考え方の違いであり、一概にどちらが良いといえるものではありません。これから鍼灸治療を学ぼうとしているものにとっては、自分がどのような鍼灸師になりたいかといいう青写真を描くために、現在の鍼灸にある流派や研究会を知っておくことは大切になりますし、自分の治療技術を磨く場や、信頼できる先生を探しておくことはとても大事なことになります。また、これから鍼灸治療を受けたいと思っている一般の方にとっては、これだけたくさんの鍼灸院がある中で、どこの鍼灸院を選択したら良いのか判断がつきにくいところであります。自分が受けたい治療院を見つけるための基礎知識として、鍼灸にも流派があるということを知っておくと選択しやすくなると思います。
 この本は、それぞれに特徴を持った鍼灸家の治療体験や治療方針を、著者自らが各先生の治療を受けながら述べています。著者ははりきゅう免許を取得している方なので、その内容は的確です。そのためこの本は、治療を受ける患者様にとっては、鍼灸治療を選択するガイドになり、鍼灸を勉強している方にとっては、自分の方向性の参考になると思います。その他に、流派を問わずに、鍼灸治療の特徴やこれからのあり方、これから鍼灸治療に求められる側面などを問いかけています。一般の方にも、プロの方にも示唆が多く、現在の鍼灸を理解するとても読みやすい本だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東洋医学・鍼灸医学
感想投稿日 : 2010年4月28日
読了日 : 2010年4月28日
本棚登録日 : 2010年4月28日

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