用心棒<普及版> [DVD]

監督 : 黒澤明 
出演 : 三船敏郎  東野英治郎  山田五十鈴  加東大介  仲代達矢 
  • 東宝
4.01
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本棚登録 : 343
感想 : 58
5

黒澤作品て、「世界のクロサワ」だのなんだの
評論家やオッサンらが昔から色々薀蓄を垂れるばっかりで、
なんだかそういうのは不健康だなあという感覚がすごくあります。
ビートルズとかも一緒ね。

映画好きの人なら世代関係なく観る人は観る、と。
特に映画好きでなくても皆名前は知っている。
けど、そういう人が観てみようってそんなに思うかなあ、
観るきっかけってあるかなあというのが疑問。
なんか、もうちょっと違う言い方や感触で
作品の面白さを伝えられねえもんかなあ、とよく思いますね。

黒澤作品は「単純に面白い」です。
大衆娯楽としての映画、映画としての面白さ。
娯楽活劇。アクションエンターテイメント。

映画はそもそも娯楽であり芸術なのだけど、
エンターテイメントを突き詰めるとものすごい芸術作品になった、
それが黒澤映画なんじゃないかな。


さて『用心棒』ですけど、
これはキャラクターがいっぱい出るのでその面白さがまずある。
東野英治郎とかほんと最高。(西村晃も出ててW黄門様)
あとは大体いつもの面子、所謂東宝の大部屋俳優さん達。
これが喜八っつぁんの映画やゴジラ・ウルトラシリーズも好きな人だと
横断的に出てくるので楽しいのです。

異彩を放ってるのはいつもの天本英世とw、
いつもの「よし、わかった!」の加藤武。
そして羅生門綱五郎という人。
「こんな骨格の地球人はいない。」
いや、おるってw


例の仲代達矢のピストルの件ですけど、
続編の『椿三十郎』とは時代設定が違ってて、
これは1860年代、幕末のお話なんですよね。
まあギリギリIfで成り立つかな、というところ。
しかも本物のS&Wの初期モデルを空砲で使ってるんだとか・・・?
(龍馬が使ってたやつとかあそこらへんの型)

あと、黒澤=パンフォーカスってよく聞きますけど、
奥行きがある町の路地で、
手前に東野英治郎からの~奥の敵ナメの~ミフネ、で
「あぁ~こういうことか!」とすごく実感できました。


ストーリーは、前半は静かに進んでいって延々状況説明をしてて、
後半からぐわーっと盛り上がってきます。
脱出シーンが燃える!!!

翻案された『荒野の用心棒』ってこんなんだったかなあ。
あまり覚えてないけど、似ても似つかんと思うんだけど・・・。
女が絡むんですよねえ、『荒野の用心棒』は。
あと樽がごろごろーってなってたような記憶しかないw
どっちかというと脱出シーンや棺桶は、
『続・荒野の用心棒(ジャンゴ)』に引用が見られるような。

あと、『荒野の用心棒』は長モノとリボルバーの対決が見所で、
そこにギミックがあるのだけど、どちらも飛び道具でしょ。
『用心棒』の方はピストルvs.刀で、ミフネどーすんじゃい!?
ってところに面白みがありますからねえ。
断然オリジナルの『用心棒』の方がおもろいです。
笑いがあるってのも大きいけど。

一箇所だけ嫌いな点は、最後の対決の後が長いこと。
でこれは続編の『椿三十郎』が最高。
どちらも方向性が違うのだけど、その点では『椿三十郎』の方が好きですね。

劇伴、BGMも最高。
というか音楽がいちばんクレイジーです。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 時代劇
感想投稿日 : 2013年6月5日
本棚登録日 : 2013年6月4日

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コメント 10件

kwosaさんのコメント
2013/06/05

GMNTさん!

僕も先日『荒野の用心棒』からの流れで『用心棒』を観ました。
いい歳をして恥ずかしながら黒澤作品初体験。

>ビートルズとかも一緒ね。

すごくわかります。
自分がいろいろ思っていたことをGMNTさんが一言で言い表してくれました。
黒澤明、すげー、おもしれー、かっけー、でいいと思いますけどね。

『荒野の用心棒』『用心棒』の流れで観た自分としては「樽がごろごろー」は強烈でしたが、脱出シーンや棺桶はなかなかに「まんま」で驚きました(かといってどちらが劣るわけではないですが)。
棺桶運びを亥之吉に手伝わせるあたりは面白かったですよね。

あ、あのジャイアント馬場のお化けみたいな人は羅生門綱五郎っていうんですね。
脇を固める人達の顔にパンチが効き過ぎていてそれだけでも見応えあります。

GMNTさんのコメント
2013/06/05

ビートルズとかだと、ドラッグに関係する曲やストーカーまがいの曲とかヤバい曲もいっぱいあるのに、
日本では音楽や英語の教材として普通に使われてたりしますよね(笑)。

日本では映画そのものの授業はないけど、
黒澤映画なんてバイオレンス映画ですし・・・
(もちろんヒューマンドラマもありますが)

そういうところの、世間の一般的評価に対する違和感が、
若いときからけっこうあるんです。

みんながみんな、ハードルをぽーんと越えれればいいんですけど、そうではないですよね。
だからなんとか、ハードルを壊せるような感想を、
ここだけじゃなくて、友人と話すときでも常にしたくって。
「見方を変えてみるとおもしろくない?」って。

なので、
>いい歳をして恥ずかしながら
これね、全然そんなことない!と思いますよ。
作品といつ出会えるかってのは重要ですけど、
良い作品だと「死ぬ前に出会えてほんとよかった・・・」って思えますもんね。

僕が去年から急に読書を始めたのも、同じような感覚です。
本にしたって、結局は読むか読まないかだけですもんね。
タイトルや作者の名前は聞いたことあっても、
実際にそれをちゃんと読んだか?ってことですし。

GMNTさんのコメント
2013/06/05

kwosaさんともうちょっと話したかったので2回にわけました。

『荒野の用心棒』、棺桶脱出シーンってありましたっけ。
もう観たのがだいぶ前なので全然覚えてなくて(笑)
『用心棒』の方の棺桶シーン、桶屋の伏線が効いててものすごく感動しましたよ。
西洋と日本で、棺桶の形が違うじゃないですか。
そこらへんから面白いですよね~。笑えます。

羅生門綱五郎はほんと、馬場さんに似てますね(笑)。
たまたまMIBを観て、カレル・ストルイケンが出てたので。
巨人症というか、そうでなくてもデカい人ってのは
不気味なのと同時にユーモラスでもありますね。

そういえばkwosaさんてポン・ジュノが作品が好きってどこかに書かれてましたよね?
観てみようと思います。
他にもいろいろと、お薦めがあったら教えてくださいね!

kwosaさんのコメント
2013/06/06

GMNTさん!

コメントへのご返答ありがとうございます。

『荒野の用心棒』の方にも、とぼけた棺桶屋のじいさんがでてましたよ。
わりと最初の方で酒場の隣でとんかちカンカンやっていて、コミックリリーフかなと思いきや後半で脱出に一役買うという。
脱出シーン以外も、多少のエピソードの組み替えはあるもののほぼそのまんまで、続けて観ると面白いですよ。

『荒野の用心棒』『用心棒』どちらも甲乙つけ難い魅力があります。
しかしとりわけ『用心棒』の方は独特のユーモアがあっていいですよね。

さて、ポン・ジュノ作品。好きですよ。
とはいえ、実は語れるほど数を観ているわけではなく、韓国映画もそれほど詳しくはないので、ただ「ポンジュノ、ポンジュノ」言っているところはあります。

それでも『母なる証明』は劇場でもDVDでも観た一番好きな作品です。
自分の中で韓流スターの一人としての認識しかなかったウォン・ビンの凄さを知りました。そしてやっぱり「母ちゃん」が良かった。

あとGMNTさんが『TOKYO!』のレビューで触れていらっしゃった『グエムル-漢江の怪物-』
これも最高です。
後半の展開がいろいろ盛り込み過ぎだったりするものの、それを含めて大好きです。
なにより「怪獣」の適度なサイズ感が恐い。
そしてパニック描写が素晴らしいです。
ぜひ観て頂きたいです。

なんだかいろいろ書いてしまいました。
GMNTさんの映画レビューにはいつも「うんうん」と唸らされます。
基本的には観た作品だけをチェックするようにしているのですが、ついつい未見の物も覗いてしまいますね。
いつも楽しみに拝読しています。
それでは、また。

GMNTさんのコメント
2013/06/06

なるほど、言われてみたらなんとなく思い出してきたような・・・
なんかカンカンやってた絵が頭に浮かんできました(笑)。

イーストウッドがあまり喋らないせいか(そこが良いとこなんだけど)、
昔観た時はけっこう退屈だったんですよね。
『夕陽のガンマン』以降はキャラクターが増えるんで、バッチリ面白かったんですけど。

>ポン・ジュノ作品
おぉ~、お薦め教えて頂いてありがたいです!
ウォンビンって『アジョシ』のイケメンですね!

『グエムル-漢江の怪物-』、予告からして恐ろしいし、
変な映画だなあ・・・って(笑)。
韓国版『クローバーフィールド』的なもんかな?と勝手に思ってたんですが、
サイズが小さいんですね。
カラックスの『メルド』といい、サイズが小さいと面白そうですね!
その二作品、近いうちに観てみたいです!


僕のレビューの感想の件、ありがとうございます。
kwosaさんにそう言ってもらえると超うれしいですよ~!
世間的に言うと有名じゃなかったり、つまんない映画でも
なるべくレビューは書くようにしていて。
映画つまんなくてもレビューで面白いこと書ければいいかなと(笑)。
「この映画は面白くないけど、別のこの作品はおもしろいよ!」とか、
そういう薦め方もできるかな?って。

なるべくネタバレしないようにはしてるんですけど、
つまんない映画、誰も観なさそうなのはネタバレしてもいいかな、ぐらいで書いてます(笑)。

GMNTさんのコメント
2013/06/11

あくえりうすさん

初めまして!こちらこそご挨拶せずにすいません。
僕のレビューに対してそこまで言って頂けて、恐縮しますし、とても嬉しいです!

こちらこそ、あくえりうすさんの本棚を最初見たときに、
何かピンとひっかかったんですよ(笑)。
趣味の傾向が近いのかな?って。
で、今見たら消されてましたか?世代が僕と一緒というか
たぶん同学年じゃなかったかな?と思うんですけど・・・。

談話室の「顔ジャケ」のやつで、あくえりうすさんが挙げてるのを見てひとりでウケてました(笑)。
良い意味で、とっても濃くてすばらしいなと。

これからもよろしくお願いします!

GMNTさんのコメント
2013/06/11

僕が78年生まれなので、79年の早生まれだったら同学年ですね。
あぁ、「好き」といったら語弊がありますが、とりあえず太宰をちょこちょこと読んでいるのと
(後期の方は全然なんですが)
ブコウスキーを読みたい!とブクログ始めた当初は思ってたんですよね。
だから何か通じるものがあるんじゃ・・・って。

ティム・バックリィはアルバム数枚持ってるんですが聴きこめてなくって。
あと、エリオット・スミスはちょっと前に知ったんですけど、
「なんで俺はこの人を聴いてなかったんだ!!」と思わされました。
そして、ザッパは一番好きなんですけど、
「顔ジャケ」に貼ったやつはほとんど持ってないんです(笑)。
他のアルバムは5~6枚持ってるんですけど、
なんせザッパは数が多いので・・・。

乱入なんてとんでもないですよ~!
全然大歓迎です!
趣味の合う方と出会えて、お話できるのはとても嬉しいです!

GMNTさんのコメント
2013/06/13

太宰、初期作品集『地図』を半分ぐらい読んで止まってるとこです(笑)。
後期というか『人間失格』まではやっぱり行きたいですけど、
あれのドロドロ感がダメって人も多そうですね。
そこも含めて全部読みたいですけど。

黒澤作品も含めて、独創性ってとこまではあまり考えてなくて・・・
純粋な面白さ、エンターテイメント性ですかねー。
エリオット・スミスはまたちょっと違って、切ないなあという感じです。
ザッパはザッパ一門というか、「ザッパと愉快な仲間たち」の人脈も面白くて(笑)。
トーキング・ヘッズにエイドリアン・ブリューが参加してるやつとか最高です。

最近は音楽の方は裾野を広げることはしてなくて、
昔買ったやつをひたすら聴きこんだりしてますよ。
今はHipHop、ブルーハーブを聴いてますけど。
なので映画レビューばっかりになっています(笑)。

『用心棒』も、もちろん名作なんですけど
個人的に好きなのは『椿三十郎』なので、そちらもセットで是非。

GMNTさんのコメント
2013/06/14

『地図』ってまだ10代、最初の方は15~6歳の頃の作品から始まりますよね。
のちの作品の面白さとはまた違いますけど、
普通に読みやすい読物として読んでますよ。

HipHop、お薦めするのは難しいですが・・・
僕は日本のやつしか聴かないんですよ。
HipHopはとくに言葉が重要だと思ってるので。

最近また聴きだしたのは、田我流を聴いてからなので田我流の1st.と2nd.。
この二枚は最近ずっと聴いてました。

あと、99年頃が重要なんですけど、
好きで、かつ万人にお薦めしやすいのはライムスターの『リスペクト』。
それとは別に、音楽として素晴らしいと思うのは
ブルーハーブの『STILLING,STILL DREAMING』と
Shing02の『緑黄色人種』とかですかねー。
大きめのTSUTAYAやゲオだと大体あると思います。
(ブルーハーブと田我流の1枚目があるかどうか・・・)

最近のはほとんど買ってないです。
色々聴きたいんですけど、HipHopはゆっくり時間をかけて聴きたいので、
1枚を聴き込むのに1ヶ月ぐらいかかるんで、
あまり買わないんですよ。

GMNTさんのコメント
2013/06/14

いえいえ~。こちらこそ!
また何か、好きな作品や気付いたことがありましたら、
お気軽にコメントして頂けると嬉しいです!

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