ジョージ5世の子供が吃音症で王様のスピーチという映画にもなったジョージ6世、ジョージ6世の子供がエリザベス2世、エリザベス2世の子供がチャールズ皇太子。
エリザベス2世、26歳にして英国を統治する女王となり、生涯を英国民と神に捧げる。伝統・権威を重んじ、そのための自己犠牲を厭わない。ストイックで古風、威厳と強さを持つ。
ダイアナ元王妃のショッキングな死亡事故とマスコミ・国民からの王室批判。大きな憂いを抱えて、ぽかんと放り出されたひとりだけの空間で思わず声を漏らして泣く女王、キャベツちゃん。
鹿を見て「まぁなんて美しい。早く逃げなさい。」
真実は分からないし、真実が表に出ることも無いだろうけれど、この映画に描かれているエリザベス女王は威厳と沈思、滅私、慈悲に溢れる統治者だ。私はこういう権威を重んじ、滅私できる人間は好き。
だが、ダイアナ視点の作品を観れば、またそれはそれで全く別のものになるし、そこにも真実があるのだろう。
ダイアナの事件をエリザベス2世の視点から描き、エリザベス2世をこれほど魅力的に描けるのは、作り手側にエリザベス2世に象徴される権威と滅私に対する敬いの念があるからだろう。
ブレア首相が女王擁護のために熱弁を奮うシーンも良い。
「私は誰よりも英国民を知っていて、彼らの見識と判断を信頼しています
英国人の哀悼の表現は控えめで品位があるのです。」
本来なら個々がパーソナルな喪に服すべき時に、マスコミが煽り立てているだけというエリザベス2のこれらの言葉は私は好きなのだが、これは、「あるべき」主義で、それは理想と強制と没個を孕んでいる。
それがある人にとってはとても苦痛になることもあるだろう。
まったく異なるふたりの価値観に善悪・優劣はない。
- 感想投稿日 : 2011年8月5日
- 読了日 : 2011年7月29日
- 本棚登録日 : 2011年7月29日
みんなの感想をみる