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ぐーたらうりぼうさんの本棚 > 幸福な食卓


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レビュー by ぐーたらうりぼうさん

小説   読み終わった  読了日 : 2010年01月27日  4

読み終わって時間が経ったあとに、ふと思い出し、また読みたくなる。そんな小説こそ、本当に他人にオススメできる小説なのではないかと思う。
瀬尾まいこの『幸福な食卓』は、そんな作品の一つだ。

この作品は物語の世界や登場人物をとても身近に感じられる。
登場人物は、受験や恋愛、学校生活の悩み、複雑な家族問題等々、部外者からみるとささやかでも、彼らにとっては重大な問題を抱えながら生活している。そう、私たちと同じように。私たちの日常なんて、世界から見るとちっぽけで、瑣末なものかもしれない。けれど誰もが、当人にとっては大ごとな悩みや事件を抱えているものだ。だから、読者はそんな登場人物を、自分のそばにもいる人のように感じることができるのだ。

また私たちの日常生活に欠かせないものといったら「食事」だ。私たちの生活の随分多くの時間が、食事を用意したり、食べたり、片付けたりするのに割かれている。この作品には、登場人物たちの普段の食べ物の描写や、食事風景がたくさん描かれている。それがまた物語の世界を身近に感じさせる。読んでいて、自分もその世界の中で、登場人物のすぐ隣で生活しているのではないかと錯覚する。

しかしこの物語には、現実世界のとげとげしさはなく、なんだかほっとする。現実社会では、いろいろ事件も起こるし、「悪い人」も多い。けれど、主人公は根が真面目で、気がいい。ほかのくせのある登場人物も、みんな人のよさがある。それがこの物語に、穢れのない、「爽やかさ」をもたらしている。

そしてなんだかんだと問題を抱える私たちの周りには、しかし見過ごしてしまっているだけの、手のひらサイズの幸せがいっぱいあることを認識させてくれる。

自分の気づかないところで、実は自分を守ってくれている、自分に寄り添ってくれている人や家族の存在。身近な人の喜ぶ姿やちょっとした仕草。一緒にいて安心できる、疲れない誰かと過ごす時間。好きな人の笑顔。

見方を変えれば、私たちの周りにはいっぱい、私たちを心地よくしてくれるものが、いっぱいあるのではないか?

『幸福な食卓』を初めて読んだ時、最後の思わぬ展開にショックを受けた。電車の中だったので、涙を見られないようにするのが大変だった。もう一度読んでも、やっぱり泣ける。哀しい、切ない。でもこの作品全体を包んでいるのは、あくまで陽だまりのようにやわらなかな、あたたかさだ。

たとえどんな悩みや問題を抱えていても、どんな哀しいことが起こっても、時は止まることなく流れる。そしてその中で、いつも何かが終わり、何かが始まっているのだ。小さいかもしれないけれど、そうやって何かが変わっていく。それが日常だ。

読者は、物語の中の、すぐそばにいるような身近な登場人物のそんな日常を覗き見しているような気分になる。
だから読み終わると、陽だまりのようなあったかな気持ちになる。そして、自分の人生、いや、日常生活も捨てたもんじゃないのではないか。またもうちょっとかんばろうかな。そんな気にさせてくれる。 登録日 : 2010年01月27日 12:59:41


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