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ぐーたらうりぼうさんの本棚 > 八朔の雪―みをつくし料理帖


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レビュー by ぐーたらうりぼうさん

小説   読み終わった  読了日 : 2010年01月29日  5

人の優しさや思いやりを最近感じていますか?
自分以外のだれかに、優しさや思いやりを持って接していますか?
高田郁の『八朔の雪 みおつくし料理帳』は心までほんわかさせてくれる、やさしい時代小説だ。

洪水で親や幼馴染を失った澪は、縁あって大阪の料理屋の使用人となる。その才能から女でありながら板場にも入るが、店は火事でなくなり、母とも慕う女将さんと江戸の長屋で暮らしている。澪は蕎麦屋で働いていたものの、主人から店をまかされ料理屋を始める。やがて店は評判になっていくが、有名な料理屋に料理を真似されたり妨害を受けていき・・、という連作時代小説。

この作品、主人公は澪だが、もう1人の主人公とも言えるのが料理だ。澪は上方と江戸の味付け、素材の使い方や好みの違いに苦労するが、その上方と江戸の両方を上手く使うことで、新しい料理を生み出していく。その料理を考えていく過程もさることながら、何より料理そのものがとてもおいしそうで、読んでいて思わず生唾がわいてくる。巻末にはレシピも載せられているが、この目にも浮かぶ魅力的な料理が、この作品の第1の魅力といえるだろう。

さらに澪をはじめ登場人物も魅力的だ。易者に苦労が尽きないといわれた澪は、次から次に試練に見舞われながらも健気に頑張る、まさにNHKの朝ドラ的とも言うべき、日本人が愛してきた典型的なヒロインだ。このキャラクターに「下がり眉」が加わることで、愛嬌もある愛すべき主人公となっている。

さらにご寮さん、蕎麦屋の主の種市、近所のおりょうさん、源斉先生などの、そして彼らに対しての澪の、優しさや思いやりが、このせちがないご時勢にあって身にしみる。また澪と丁々発止のやり取りを見せるなぞの武士小松原や、澪の幼馴染の野江といった登場人物や敵役の登龍楼が作品に良いアクセントを加えている。

読んでいて、『八朔の雪』にはこれまでのいくつかの人気作品を連想させるところがあるように感じた。上方と江戸の味の違いというのは、山本一力の『あかね空』を思い起こさせたし、料理屋の話というのは同じく『梅咲きぬ』に通じる。また吉原の花魁の登場は『坂崎磐音シリーズ』を髣髴とさせ、何より絶え間ない試練に立ち向かう料理人と魅力的な料理といえば、韓国ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』を連想させた。

このような人気作に見られる、いわば黄金のエッセンスが混ざり合った作品ということもできるかもしれない。しかし『八朔の雪』は、単にこうしたもののつぎはぎというのではなく、これらを澪の料理のごとく上手く混ぜ合わせて、今までの時代小説にない、独自の味を出す作品に仕上がっている。それはまさに澪の人柄とその料理のようにほんわかしている。

澪の物語はすでに次巻『花散らしの雨』が発売されており、こちらも読み終えたが、今後『みおつくし料理帳シリーズ』となっていくことは疑いようもない。魅力的な登場人物と設定であり、時系列に沿ってストーリーを続けていくことができる。さらに『花散らしの雨』では、小松原や野江、登龍楼との関係だけでなく、新たな登場人物もあらわれ、さらにいまだ触れられていない江戸で行方不明となった大阪の店の跡継ぎのこともあり、シリーズ化していくには万全といえるだろう。

今後さらに、心洗われるような、ほんわかとした『みおつくし料理帳シリーズ』が続いていくことを楽しみにしたい。 登録日 : 2010年01月29日 22:14:57


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