初・綿矢りさ。4つの連作短編集。冒頭の「おとな」を除いて、いずれの作品も小学校高学年〜中学校という時期のエピソードを大人になった主人公が振り返る形式で描かれる。人生において記憶に強く残っている人間関係やエピソードは誰にでもあるわけだが、その記憶の中の人物像と、それを回想している今の現実とのずれに焦点が当たっていて面白い。
自分の思っている「他人の人物像」って、記憶の曖昧さと裏腹に「こういう人」という思い込みは強固だったりする。そして「憤死」のように、学生時代の個性的なキャラがさらにパワーアップしているなんてこともある。女性が主人公の「憤死」は、そういう意味で綿谷さんらしさ全開の悪意と皮肉に満ちた、それでいて嫌みじゃないむしろ爽快なストーリーで、これが彼女の真骨頂なんじゃないでしょうか。まあ、彼女自身の外見のアイドル性と作風のギャップにそのままマッチしてるし。
一方で、男性が主人公の2作は、ホラー要素満載で、そのまま「世にも奇妙な物語」になりそう。「人生ゲーム」の世界観は結構好き。でももう一歩かな。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年5月12日
- 読了日 : 2013年5月12日
- 本棚登録日 : 2013年3月8日
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