地下鉄(メトロ)に乗って THXスタンダード・エディション [DVD]
- ジェネオン エンタテインメント (2011年10月17日発売)
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感想 : 157件
日本映画専門チャンネルで視聴。
浅田次郎の原作は未読だが、この映画は非常に良い。
5年前ぐらいに、メトロに岡本綾のポスターが貼られていたことを覚えているが、メトロを使ったSFというのが面白い。
兄の死を巡る父子の確執と、自分と自分の母を捨てた父。不倫関係にある2人は、田中泯演じる野平先生を軸として、タイムスリップして戦中戦後の時代が生んだすれ違い、父の姿、2人の関係などの真実を知ることになる。
岡本綾という女優は、この作品を最後に、本当に芸能界から消えてしまった。しかし、消える前にこの役を演じたということに数奇なものを感じる。「お母さんを秤にかけていいですか?」という台詞。父親を知らないみち子が愛してしまったのが、自分の異母兄弟であると知り、その気持ちを止めることが出来ない。「私はあなたにヤキモチを焼いている」。自分の存在を愛する人の記憶から消すことで、愛する人の幸福を成就させるという、なんという切なさ。「あの」シーンの表情は、渾身の演技だと思う。
再度、野平先生と再会し、メトロに乗る真次はそうして再生する。記憶の外に消えたポケットの指輪が唯一の愛の証なのだ。真次は実の父と和解し、自分の子とキャッチボールをする。
篠原哲雄といえば、「月とキャベツ」「天国の本屋」。儚い女性を描かせると天下一品。映画の構造上の問題はいろいろとあるが、この観終わった後の余韻は素晴らしい。円熟期と思える。これだけの作品を作り続けているのもうなずける。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
DVD
- 感想投稿日 : 2012年1月11日
- 読了日 : 2012年1月9日
- 本棚登録日 : 2012年1月9日
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