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読書備忘録。
レビュー by おおくぼさん
主人公・鋤名彦名は主の命を受けて刀を奉納する旅の途中パラレルワールドに嵌まり込んでしまうが、この「贋の世界」で任務を続けることを決心し、様々なトラブルを起こしながら目的地の大権現を目指す。
町田康はいつも、欺瞞に満ちた人間を町田流に笑いを足したデフォルメで描き、それらが主人公に厄災を及ぼす構図を好んで書く。
主が創造した「贋の世界」の中においては主人公は唯一「真の世界」から送り込まれたプレーヤーとなり、主の意思に順ずると信じて欺瞞的な人間を破滅させ偽を糾してゆく。ところが当人が仮定想定の中で下す決断は実はほとんど屁理屈で独善的である。その矛盾は話が進むほど本人もごまかしきれないものとなって追い詰められてしまう。
『告白』では「なぜ人は人を殺すのか」というテーマで不器用な落伍者が周囲の欺瞞によって貶められフラストレーションが膨らむ様が描かれ、結末ではやりきれなさが残った。対して『宿屋めぐり』では主という「指導する者」の存在が新たに軸をなしていて、その意図を都合よく解釈・利用した主人公自身の欺瞞がどんどん色濃くなっていく様が描かれているように思う。
「本当のことを言ったら殺される」と言って死んだ友人のエピソードが出てくるがこれは中島らものことで同氏の小説『バンドオブナイト』の巻末解説で町田康が取り上げているのに気がつく。この解説で町田康が書いた内容と『宿屋めぐり』で書かれていることがいろいろ重なっているのが興味深い。
レビュー登録日 : 2011年02月13日
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