待望の復刊です。非常に嬉しいです。
 難病の子どもを持ったユダヤ教のラビ(教師)が、「神」と「苦しみ」との関連を深く考えて著した本。聖書に深く関わった内容ではありますが、伝統的な神観とそれに基づく「苦しみ」の解釈に大きな疑問を投げかけています。神を信じているかどうかに関係なく、「なぜ私だけかこんな目に…?」と一度でも問うたことのある人には一読の価値のある本だと思います。

 以前からずっと読みたいと思っていた、遠藤周作の代表作。タイトルからもっと読みにくい、難しく重たい話を想像していたのですが、思ったよりもずっと軽い文章で書かれていて、読み始めたら一気に読破してしまいました。しかし、扱っているテーマは決して軽いものではなく、人の生き方を問う真剣なもので、読み手にも深く自分の生き方について考えるきっかけを与えてくれます。遠藤周作という作家の実力が余すところなく発揮された名作であり、一度は読んでみるべき作品と言って過言ではないと思います。

カテゴリ 一般小説

 カトリック教徒であった遠藤周作が、自分の筆で書き上げた「イエスの生涯」。この本は、学問的な視点から見ると疑問符つきで読まねばならないところがたくさんあります。(今日では遠藤氏がこの本を執筆した当時よりも、もっとイエス研究が進んでいるためでもあるでしょう。)しかし実際にイスラエルを訪れたことのある遠藤氏の視点、そして信仰者としての遠藤氏の視点は、「イエスの姿」を新たな角度で描き出しています。この作品は、遠藤氏の信仰告白であるといっていいのかもしれません。興味深い作品です。

カテゴリ キリスト教

 明治以降に出てきた日本の新しい宗教を取り扱った本。歴史も踏まえて学問的に、わかりやすく解説してあります。新宗教に関して、客観的かつ総合的に知りたい方にお薦めの入門書です。巻末に新宗教の一覧表と簡単なデータが出ており、知らない宗教の名前を耳にしたときに、それがどんな宗教かを調べるのに非常に便利です。ただし、新しい宗教はどんどん増えているので、この本に記載されたデータも古くなっているかもしれません。

 最初この本のタイトルを目にしたとき、絶対音感というものを専門家の視点で描いた本なのかと思ったのですが、最初から「そうではない」と断ってあったので、ますます面白いと思って読み始めました。専門家にはない視点でこのテーマに取り組んでいるところが斬新でした。私自身が絶対音感を持つ音楽家なので、他の音楽家へのインタビューや逸話も面白かったです。専門家の間ではすでに周知の問題である絶対音感教育とその歪みについても触れてくれて良かったと思います。

カテゴリ 音楽

 ピアニストといえばミケランジェリ!と迷わず答えるくらいの私ですから、当然こういう本も見逃さず買っております(笑)著者のリディア・コズベックはミケランジェリの弟子で、気難しさとキャンセル魔で有名だったミケランジェリの誤解されやすい面を擁護し、尊敬の念を持って暖かく描いています。あえて言うなら、褒め言葉しか載っていない(いくらなんでもちょっと褒めすぎ!?)のが残念でしたが、いろいろ知らなかった逸話も読めて、ファンとしては嬉しい1冊でした。

カテゴリ 音楽

 信仰についてよくまとまっている本だと思います。同じような本をすでに数冊読んでいた私には特にこれといって目新しい内容はなく、知っていることの再確認という感じでしたが、このようなテーマの本を初めて読む方には良いのではないでしょうか。特にクリスチャンにはきちんと読んで考えて欲しい本です。

カテゴリ キリスト教

 クリスチャンであり、精神科医である著者の視点から見た日本のキリスト教の現状と、問題提起、そして改善のためにどうするべきかを書いた本です。様々な臨床例を見てきた著者の視点は非常に優れたもので、問題を見事なまでに描き出しているので、特にクリスチャンの方は一読されることをお薦めします。一人のクリスチャンとして、また教会で働く者として、この本からは多くを学ぶことが出来、また深く考えさせられました。

カテゴリ キリスト教

 ヘッセというと「車輪の下」が代表作となっていますが、私が一番最初に読んだヘッセはこれでした。ある作曲家の自伝という形で書かれている小説です。同じ音楽家の物語だけあって、私には身につまされる話も多かったのですが、主人公の恋が成就しないがゆえに、余計にロマンを感じさせるストーリー展開になっています。純文学作品としても読みやすく、ヘッセ入門としてもとっつきやすいので、あまり外国文学になじみのない人にもお薦めです。

カテゴリ 一般小説

 カウンセラーの知り合いのお薦めで借りて読み、あまりに面白かったので後日自分でも購入した本。男女の違いを、脳のつくりの違いから説明しています。基本的にジェンダーフリーを支持している私ですが、それでも無視できない男女の違いの部分を、脳のつくりの違いから説明してもらってすっきり。またホモセクシャル・トランスセクシャルについても同じ論理で見事に説明しており、これが本当だとみんなが信じることが出来れば偏見がなくなるのでは?と思いました。男女の違いのことを考えるときに、新しい視点を与えてくれる1冊です。

カテゴリ 心理学

 チャリティーとかボランティアとかいう言葉すらなかった40年前の日本で、芸能人たちが始めた「あゆみの箱」運動。国の福祉政策にまで影響を与えたこの運動の歴史や、関わって活動してきた人々について、37年間事務局長をやってきた著者が、その独自の視点で生き生きと語っています。今の私たちにとっては、チャリティーやボランティアという言葉も概念もすでに当たり前のものとなっているだけに、この本を通して、この40年間にどんな人がどんな活動をしてこの言葉と概念を定着させたのかを知って驚きの連続でした。中心になって活動してきた芸能人たちのパワーと情熱が伝わってきます。チャリティーやボランティアに関わる人に、原点を知るためにぜひ読んでいただきたいお薦めの1冊です。

カテゴリ ボランティア

 若き小澤征爾が、日の丸つきスクーターを携えてヨーロッパへ向かい、指揮者コンクールに優勝、アメリカで成功するまでの自伝。「天は二物を与えず」とはよく言ったもので、小澤氏は決して文章が上手いわけではないのですが、面白い体験談と率直な文章は読む人をぐいぐい引き込んでいく魅力があります。ヨーロッパに住んでいるだけに、かなりリアルに思い浮かべることの出来る描写もあり、それ故に笑いが止まらなくなった箇所もありました^^; 今や一流指揮者の階段を登りつめた小澤氏の、小気味よい裏話集といっていいでしょう。

カテゴリ 音楽

 ナチスによるユダヤ人迫害を書いた本はいろいろありますが、この小説はその中でも異色の作品です。舞台はウィーンに近い架空の保養地バーデンハイム。この町のユダヤ人たちが、じわじわと行動を規制されていき、最後に強制移送される様子が描かれているのですが、当のユダヤ人たちは自分たちの身に何が起こっているのか全く気づかないのです。正しい情報をえるすべもなく、何が何だかよくわからない状態のまま、ナチスの手におちていくユダヤ人たちの様子が、淡々と描かれているがゆえにおそろしくリアルで、読み終わったあとで彼らのその後の運命を思うと、背筋に寒気が走ります。ユダヤ人迫害についてだけではなく、国家による情報操作の恐ろしさをひしひしと感じる作品です。

カテゴリ 一般小説

 家庭裁判所調査官である著者が、さまざまな少年犯罪と関わってきた、その事例を語る本です。ですが、この本は堅苦しい法律や犯罪を扱う本ではありません。どの事例にも、犯罪を犯した少年少女一人一人、および彼らを育てた周囲の環境と正面から向き合おうとする、著者の真剣で暖かいまなざしが注がれており、それが間接的に社会や家庭に対する問題提起となっています。法律のジャンルに入れてしまいましたが、心理学のジャンルに入れてもいいと思われる本です。

カテゴリ 法律

 数多くの推理小説を読みましたが、誰がなんと言おうと推理小説の最高峰だと言い切ってしまえる作品です、これは(笑)。ここまで見事な「完全犯罪」を描いた作品は他にないですね。一番最後に犯人が書き残して、ビンに入れて海に流した文章が載っていなければ、読者にとって犯人は永遠の謎でしょう。私はこの作品でクリスティーにはまりました。「推理小説好き」を自称するなら、一度は読まなきゃモグリです(←独断^^;)。

カテゴリ 推理小説

 西洋中世史の専門家による日本文化論。「世間」という概念をキーワードに、何回かの講演を集めて本にしたものです。ヨーロッパ暮らしが長いせいか、この本の切り口は心から納得のいくもので、最初読んだ時まさしく目から鱗が落ち、今までの疑問がすっきり整理できたような感じがしました。西洋文化との比較も興味深く、とても勉強になりました。ドイツと日本との、文化のギャップに悩む友人たちの間で大好評です。すでに文庫化されています。

カテゴリ 文化

 私がドイツ語に関するブログを書いていると知った友人が貸してくれたのですが、面白かったです〜!英語と日本語の話が主ですが、語学と文化に興味のある人になら誰にでもお薦めできる本です。専門に偏りすぎず、一般人にもわかる範囲で、軽くコミカルに語学の話をしてくれていて好感が持てました。だからといって詳しくないかというとそうでもなくて、なかなかオタクな知識も登場しています。私のドイツ語ブログもこういう方向で行きたいけどなぁ…(キャラが違うという突っ込みはご遠慮下さい^^;)いつか機会があったら自分でも入手したいと思っている本です。

カテゴリ 言語

 難病の子どもを持ったユダヤ教のラビ(教師)が、「神」と「苦しみ」との関連を深く考えて著した本。聖書に深く関わった内容ではありますが、伝統的な神観とそれに基づく「苦しみ」の解釈に大きな疑問を投げかけています。神を信じているかどうかに関係なく、「なぜ私だけかこんな目に…?」と一度でも問うたことのある人には一読の価値のある本だと思います。現在この本は絶版になっており、私自身は古書店を探し回ってようやく見つけました。復刊を希望します。
※復刊しました!!復刊版の方も本棚に登録しましたので、是非ご覧下さい。

 イスラム教・ユダヤ教そしてキリスト教の聖典となっている聖書を、聖書学の研究の成果を用いてとても学問的に扱った本なので、「キリスト教」のカテゴリに入れてしまうのは間違いのような気がしているのですが…。いわゆる信仰者の主観が入った「信仰入門書」とは全く違い、客観的で明解に解説してくれる本です。歴史的・地理的なことを含めた成立背景にもきちんと触れており、更に様々な説がある場合はそれも記しているので興味深いです。聖書について知りたいと思い、すでに聖書の内容に関して多少の知識のある人にぜひお薦めしたい「聖書学入門書」です。

カテゴリ キリスト教

 歯に衣着せぬタイプの口の悪い人が好きな私は、この本を読んで本当に気分爽快になったのだけど、人によっては不快になるだろうなぁ、と思える「日本人が好きな言葉」徹底批判本です。「相手の気持ちを考えろよ!」
「ひとりで生きているんじゃないからな!」
「おまえのためを思って言っているんだぞ!」
「もっと素直になれよ!」
「一度頭を下げれば済むことじゃないか!」
「謝れよ!」
「弁解するな!」
「胸に手をあててよく考えてみろ!」
「みんなが厭な気分になるじゃないか!」
「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」
著者がなぜ、この10の言葉が虫酸が走るほど嫌いなのかを追求しているのですが、暴走しているように見えてしっかり問題の核心を突いているところがすごいと思います。ただ、痛いところを突かれた人はたぶん逆上するのでは…とは思いますが…(汗)

カテゴリ 文化

 「放浪猫の旅の記録」での広告収入を使って支援している「生全寺」(現在は名称を「さるこの庵」としています)のご住職・奥様・ヘルパーさんたちの寄稿を集めた本です。日記や手紙の形式で書かれたものもあります。

 この本を「ボランティア」のジャンルに入れてしまうのは、実は抵抗があります。というのは、人間側の勝手な都合で捨てられた犬猫を放っておけなくて、お寺で面倒を見始めたら、いつの間にやらお寺がシェルター代わりになってしまい、「面倒を見て当然」と言わんばかりにお寺の前に多くの犬猫が捨てられたり、連れて来られるようになってしまったという経緯があるからです。それだけの「命」を引き受けるハメになったお寺は困窮し、電気代やガス代の支払いにも困るようになった。その状況を知った支援者の方々がHPを立ち上げたりして何とか支援体制を整えようとしていますが、未だにお寺は綱渡り状態です。お寺のやってきたことは「ボランティア」ではなく、「人間の無責任な行為の尻拭い」であることは、この本を読んでみたらわかるであろうと思います。

 「命」に関わるご住職・奥様・ヘルパーさんたちにとっての、それぞれの「生全寺」が綴られているこの本は、一体人間の善意とは何なのかを、深く考えさせられる一冊です。

カテゴリ ボランティア

 一番最初に買った河合隼雄氏の本がこれで、以来すっかり彼の心理学にはまった私です。ユング心理学を専門とし、それを用いて日本人の心を考える河合氏の「たましい」「死」などについての解説、そして心理療法を「宗教と科学の接点」と位置づけての説明、どれも私には非常にわかりやすく、もっと心理学について、そして心の問題について深く知りたいという興味を引かれる内容でした。「心」の問題に興味のある方に、ぜひお薦めしたい一冊です。

カテゴリ 心理学

 「若者語」というと、日本語の乱れとか、どちらかというと否定的に捉える視点が多いように思います。ところが、この本はその「若者語」を言語学的に分析してしまった、面白い視点の本です。
 「若者語」の歴史、いろいろな時代の「若者語」の比較・分類、「若者語」がどのようにして出来るか等、とても興味深い話満載です。「最近の若者の日本語は…!」と眉をしかめる人達も、自分の時代の「若者語」との意外な共通点を見出して驚くに違いありません。そして、当の若者達ですら、自分の使っている言葉にこんなに学問的な説明がつくとは思ってもみなかっただろうと思います。「言葉とは何か」を考えるにも、面白い1冊です。

カテゴリ 言語

 仏教の中でも「密教」というと何だかとっつきにくいイメージがあるかもしれません。「密」という文字が秘密を連想させるので、ちょっと不気味な感じすらするのではないでしょうか。

 この本は密教に対するそんなイメージを一掃してくれる、初心者向けの入門書です。密教の種類・歴史的変遷・修行のこと等、わかりやすく学問的に書かれています。密教に関する正確な知識を得、体系的に学ぶにはもってこいの本なので、「密教ってなんだろう?」という方にのみではなく、特定の密教に興味のある方にも、まずこの本を読んでから個々の密教について学ぶことを心からお勧めします。

カテゴリ 仏教
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