芥川賞候補作ということで手に取った。主人公がいきなり国王になりきって王国民として演説する妄想から始まる。それに比べ、実世界ではバイトも一人前にできず、なのに子供をつくってしまうダメ男。男の女との会話のやりとりのそっけなさは読者の苛立ちを煽る漢字。確かに人間上手くいかないと主人公のような態度で人と接していちいち相手の言動に不満を感じるものだが、それにしてもこんな会話のやり様でなんで家庭を築くところまで行ったのか、説明不足をこの作品に感じる。女もどこか真剣な面を覗かせるような瞬間もあるがそれでもバカっぽい。最終局面で赤ちゃんがダウン症で生まれてしまい、それに対して二人は途方に暮れる。主人公の妄想内でも誕生の瞬間に合わせて徐々に自分の退位と息子への王位継承の描写があるのだが、その妄想と実世界のダウン症の赤ちゃんの誕生のリンクのさせ方が弱い。自覚のない自立、あるいは父性の目覚めのようなものを淡々とダメ男なりの言い回し、方法で描いたのだろうが、それにしても熱量のない覚めた自覚というのは読んでも面白くない。
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- 感想投稿日 : 2014年5月29日
- 読了日 : 2014年1月24日
- 本棚登録日 : 2014年1月28日
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