村上春樹にご用心

著者 :
  • アルテスパブリッシング (2007年9月29日発売)
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感想 : 74
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本書は、「国内文壇であれほどまでに憎まれ孤立している村上春樹が、なぜ世界中で読まれ絶賛されているか」について解明しようとするものである。
ただ、この本はその目的のために書き下ろしたのではなく、気がつけば溜まっていた「村上春樹に関する文章」を拾い集めてみたというものなのでまとまりはない。
いうなれば、村上春樹に関する雑文集のようなものだ。

村上春樹に関する疑問のその一は、「なぜ村上春樹が国内批評家や作家から憎まれるのか」である。純文学を気取る批評家たちに特に嫌われるのだ。かの大作家の強い反対で彼に芥川賞が与えられなかったのは、つとに有名な話だ。
この答えは簡単で単純だ。そりゃ嫉妬をおいて他にない。
村上文学は「ローカルに根付かないやら」「血と肉の気配がないやら」...etc もっともらしい理由はいくらでもひねり出せる。しかしやっぱりこれが一番真実に近いのだろう。
「村上をボロクソにこき下ろす前に、どうして自分の作品が世界中で読まれず評価もされないのか」について3分くらいは考察したほうがよい」と内田樹はいうが、この批評家が一秒でもこの考察を行うことは決してないだろう。
ゆえに国内の現代純文学は得てしてつまらない。

第二の謎は、「なぜ世界中で村上春樹は読まれ、評価されているのか」だ。
村上春樹は国内文壇ではコキおろされながらも、しかしもっともノーベル文学賞に近い日本人作家である。
それに対する内田先生の答えは、
「それは、せっせと雪かき仕事をする大切さを知っているから。」
なぜ、雪かき仕事なのかについては、本を読んでのお楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月24日
読了日 : 2012年3月24日
本棚登録日 : 2011年10月20日

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