レビュー by haereticusさん
綴り語られる言葉は淡々として陰鬱とは無縁であったが、そこにある「世界」はいっそ不快なほど生々しく、腹立たしいほど陰気だった。何よりもあちらこちらに芽吹いていた歪の芽が。
生まれてこの方、笑ったことがないと自ら公言する巌のような男と、岩より堅い、けれど混じりけのない烈火のごとき気性の女。
器用に生きられるはずもない。
それでも、もう少し時間があったなら…、詮無いことではあるけれど、今も思う。
一度芽吹いてしまったものはもはや刈り取るしかないが、単なる掛け違いであれば、今一度掛け直すこともできたはずなのだから。
ただ、喜怒哀楽ととんと縁のない男は、それでも笑って逝ったのだから、泣き面・渋面で見送るのは、やはり無粋なのだろう。
何は然れ、三つ瀬の河原で頬を張られてなければ良いな、伊右衛門殿。
女房の平手は、鬼のそれより効くぞ。
レビュー登録日 : 2010年11月23日
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