生命世界の非対称性: 自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書 1097)

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  • 中央公論新社 (1992年10月1日発売)
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感想 : 9
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分子は化学式で表される。化学式は物質の元素組成を表す分子式と分子構造を表示する構造式(例の亀の甲)があるが、実際の分子は立体的な構造をもつ。
そこで、同じ分子式、構造式で表される分子であっても実際の立体構造で示すと違う構造になる分子がありえる。
そして化学式が同じ分子でも構造が違うと性質も異なる。本書最初の例としてスペアミントの香りと魚の臭みを抜く香草ディルの香りが同じ分子構造をもつが香りは事なるという話しが出てくる。二つの香草の香り分子は鏡像関係にあるという。片方の分子を鏡に映したかたちであるという。私たちの右手と左手は鏡像関係にある。鏡像関係にあると同じものと思ってしまうが、右手と左手は重ね合わせることができない。手のひらから見て右手の親指は右にあるが、左手の親指は左に着いているので有る。
それだけで分子の性質は変わってしまうらしい。
こういった関係が成立するものをキラルと呼ぶのだそうだ。
で、副題にある自然界はなぜアンバランスが好きかである。分子を科学的に合成するとキラルの関係にあるものが半分ずつ生成されるのだが、自然界ではどちらか片方だけになるというのである。それがなぜかと言うことをミクロの世界の話で解き明かそうと言うのが本書である。もちろん明確な正解が書かれている訳ではない。
そんな内容なので新書形式の一般書としては内容はハードである。
しかしながら生物を分子レベルで眺めるのもまた面白いのである。
サリドマイドが鎮痛剤として販売されたものが奇形児を産みだしたというのも同じ成分がキラルの関係にある片方が薬効があり片方が崔奇姓をもつという事らしい。
難しいといって避けていられない分野であるらしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物学
感想投稿日 : 2014年2月9日
読了日 : 2014年1月15日
本棚登録日 : 2014年2月9日

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