性の進化論――女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?

  • 作品社 (2014年7月12日発売)
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現代社会の理不尽さに疑問を持っているすべての人に
クジケずにこの本を最後まで読み通してほしいと願う

複雑さを装うことで責任回避している社会制度とか道徳とか
嘘と秘密にまみれた法律や政治に関する視野を広げ
思い込まされている罪悪感や競争原理や権利意識という洗脳から
解放されながら諦めて来た平和的調和の可能性を再認識できる筈だ

不安恐怖をばらまいて脅した上で縄張りによる保証を売り込む
保険制度や金融システムと同じように
男世界の嘘と秘密の支配政治と繋がった道徳で縛る宗教組織や
科学におけるダーウィニズムの暴力的勝ち抜き進化論が
もっともらしく市民を手なずけるためにセックスの罪悪感という
首輪をはめて一夫一婦の手綱を着けていることを読み取れるだろう

この本は実に多くの証拠を揃えて
一万年近くの男社会の歴史が積み上げてきた
隠された支配の仕組みの一部を開示してくれる
例えばハグし合う事でお互いの存在を認めることだとか
単に敵でないことを表す言葉として
ハグすることをオジギや握手と同じように使う
セックスも同じ意味で歓迎するとか
共にお茶囲んで理解を深めることに使う
自然界では必ずしも異性に対するだけでなく
同性同士で抱き合うことも不自然だと断定できない

お礼だったりモテナシだったり力付けだったり
援助だったりもするだろうし
気晴らしだったり欲望だったり好奇心だったりもするだろう

人間や類人猿のボノボにとってのセックスは
排卵に関係なく行われるわけで
増殖のために妊娠することだけを目的としていないし
むしろ心が満たされたり癒やされたり緊張から解放されたり
活力を得たり信頼の確認だったりするための
手段であることの方が多いだろう

繁殖だけを目的とする動物の交尾には雌に取り入ったり
オス同士の体を張った争奪戦で傷付くが
より広い意味での繁殖に解放された
楽しみを分け合い同盟を結ぶ外交的セックスにおいては
義務でも権利でも責任でもなくなり
言語以上に母性社会による支配権のない平和的調和を創りだす
手段ともなる

それに引き換え依存による男性支配社会では
お互い同士の物欲と嫉妬で分離し合ってしまう
いやが上にも管理し合うことになる一夫一婦制度の奨励と洗脳で
搾取を容易にする極めて狡猾で卑しい縄張り組織で首を絞め合う

結婚制度という社会的価値観は見え透いた建前であって
個々における本音と違う
遺産などの権利で追い込んで社会に宣言させる結婚は
自主的軟禁制度であり貞操帯やコルセットや纏足や姦通罪などの
性に対する罪悪感の植え付けと共に
所有欲と損得感からなる搾取するための手法である

金融資本主義の組織的多勢に無勢の罠から逃れて
参加市民の全員が対等で自在な分け合う共生環境を創るには
この性と食と情報に掛けられた罠を理解し卒情しなければならない

日本語版の題名を見ると恍惚感に関するプライベートな内容を
論じているように見えるけれども
原本では《夜明けの性》つまり
セックスにおける暗黒時代からの脱却だという
私達人間が当然だと思い込んできた常識や道徳といった
善悪観からの解放で自ら今後の地代を選ぶ大きな要因になるのだろう
この常識に陰には為政者達が自らを守るために宗教組織を引き込んで
民衆を未知の恐怖で洗脳し手なづけておくことに
どれだけ苦労してきたかを垣間見ることができる
と同時に
《性淘汰》を中心に見た人間社会をあらゆる角度から検証している

封建時代から今日までの物質に依存した男社会に
すっかり飲み込まれてしまった現代人の脳味噌は
支配者が搾取するのに都合のいい一夫一婦制度や各家族意識や
中央集権制度による都市化や男尊女卑や競争原理や
道徳や善悪観などの社会的価値観や
過去を引きづった未来を契約という約束で取引する権利意識など
通説=スタンダードナラティーブとして
本音と建前で矛盾した内容を確認することすらはばかられる
天性のものだと思い込まされて来たことを紐解いている

どうやら精子の強いものが勝ち抜くのでなく
卵子にとっての精子の相性によって卵子が持つ遺伝子的分子の
個性が相性のいい分子を選んでいるらしい
そのために女性性器は様々な仕組みで排除したり取り込んで
お似合いの精子を選ぶことになっているらしい
つまり一夫一婦ではなく多夫多妻こそが本来の姿だったという

どうやらこの世の決着は生命である人間に本性などなく
水がその環境によって個体であったり
液体や気体であったりすることと同じように
全ては背景となる環境の選択によってつくられた
変化し続けるものだということのようだ
とこの本で言っているようだが

今の私は人生のいてこの本賞なるものを探し出すべく
この世という生命圏が相対性時空間を背景として
生まれたのだと考えている
従って人生が目指す目的はこの本書運も発見であり
それこそが調和という無限なる絶対を目指すことではないだろうか
言い換えれば私達の生き様は永遠の冒険による無限性へと向かう
体験のプロセスだということだ

この本に関連する本として
長谷川寿一「進化と人間行動」 東京大学
長谷川真理子「オスとメス=性の不思議」講談社
「バージン・処女の文化史」 ハンナ・ブランク
「アナル全書」 ジャック・モーリン
「オルガスムの科学」 ビバリー・ウィッツプル
「盆踊り」下川 耳火 史
「おなら大全」ロミ シャン・フェクサス
「マスターベーションの歴史」石川弘義
「乱交の文化史」バーゴ・パートリッジ
「オルガスムの歴史」ロベール・
「体位の文化史」A・アルテール
「ヴァギナの文化史」イエルト・ドレント
「ペニスの文化史」 M・ボナール
「お尻とその穴の文化史」J・ゴルダン
などがある

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年2月26日
読了日 : 2015年2月26日
本棚登録日 : 2015年2月26日

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