ドラマは未視聴。
ドラマのほうは、金子直吉とよねとの主従愛に思えたが。
『天涯の船』に続いて、この著者の二作目。
関西弁の口語語りと概説的な常文との入れ子構造、地の文との緊張感がないので、この人の文章自体は好きではないが、題材がいい。
鈴木よね、実在した明治大正の豪商の妻を主人公とした話。
経済小説ではなく、明治の烈女伝といった感じなのだが、けっして女性の小説にありがちな、キャリアウーマン像ではない。なぜならば、お家さんは、会社を回す番頭たちを見守る立場であり、その自覚と悲哀につねづね悩まされているから。あくまで経営者でもリーダーでもなく、相撲部屋のおかみさんのような、縁の下の力持ち存在である。
架空の設定かどうかわからないが、亡き夫の忘れ形見の娘たちの存在が、物語に波を与えている。お家大事のためと追い出したお千が商才を磨き、自分の息子が道楽して、娘のように可愛がった付き人が出奔する。主人としての威厳を砕かれたときに、よねがお千と対峙した瞬間がなんともいえなかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年5月16日
- 読了日 : 2015年5月17日
- 本棚登録日 : 2015年5月14日
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